2 「聞こえる…」 「ん?」 「いやだ…聞きたくない、聞きたくないのに…」 「チアキちゃん?」 「いやだ、聞きたくなんか、…っ聞きたくなんかないのに聞こえる、……いやだ!」 いきなり気がふれたのかとりあえずチアキの体を支えるようにして彼女の様子を見る。 しかし、彼女に体に触れようとした瞬間に街の中を赤い炎が真横をかけて行った。 「な、ななんだぁああ!?」 炎はそこから燃え上がり、勢いを増した。 家を順々に焼き崩していく。途端に人々は混乱状態に陥り、街の外に出ようと一斉に門へとかけていく。 悲鳴が聞こえる。 親とはぐれてしまった子供の声も聞こえる。 叫び声が他の叫び声を呼び、街の壁はもろく古びたものから崩れていった。 一瞬で天国から地獄に落とされたような景色だった。 逃げようとする人々は他の人を押しぬけてでも助かろうと、それはひどい見せものだった。 『殺してやるよ…!!』 あの悪魔のささやきが耳に残っている。 このままでは実現してしまう。 「アオイ…さん…っ!!」 ジールが他の人に押し流されぬよう壁に張り付いて守ってくれていたのに、チアキはまたアオイの未来であるあの悲劇を止めに無理やりに走って行った。 [*前][次#] [戻る] |