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*
人ごみに押され、自分がどれほど流されてしまったのか分からなくなった。
でも、アオイから離れられたことがわかるとチアキはほっと胸を撫で下ろす。
(そう、これでいいんだ…)
安心する傍ら、さっきから耳鳴りがやまず、顔を歪めた。
頭に鋭い音が響いている。
「……っ」
まるで聞き取れないような音域の歪んだ旋律が脳を縦にがたがたと揺さぶっているようだった。
でも、そんな症状はどうやら自分にしか起きていなかったらしく、相変わらず人々は何食わぬ顔で行きかっている。
「……」
空を見上げる。
それは当たり前の様に青くて、そして眩しかった。
不思議に思う、自分のいた世界と瓜二つであるのに、自分の世界にはこの空で繋がっているわけではないのだ。
(はぁ………)
ため息を一つついた。
私はどうやって帰ればいいんだろう。
見知らぬ未知の場所にいる自分がちっぽけでみじめな存在に思えた。
(………いや、いっそのこともう帰る必要もないのかもしれない。)
だとしても私は、これから一体どこへ行けばいいのだろう?
頭を押さえながら、とりあえず壇上に座ってみる。
「チアキちゃん?」
びくりと肩が飛び上がりそうになったが、顔おあげると不思議そうな表情でジールは首をかしげていた。
「ジールさん…」
「あれ?アオイの奴はどうしたの〜?もしかしてはぐれちゃったりしちゃったの?俺が探して来ようか〜?」
「あ、だ…だめ!!」
ジールがどこか行く前にチアキは背中の服の裾をつかみ、ぶんぶんと顔を横に振った。
ジールはよくわからないけどとりあえず嫌がっているからなぁ、と探索に行くのをあきらめた。
「チアキちゃん顔色悪いよ〜?大丈夫?」
「……うん、平気」
「ふーん…」
ジールは目を細めてチアキを見つめる。チアキはそんなことも気づかず耳をふさいでいた。
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