16
これから起きる…?
貴方はそう伝えたいの?
これが間もない未来だと、そう伝えたかったのだろうか?
「チアキ?」
「――!!」
アオイに呼ばれてはっとなる。
「どうしたんだ?ぼーっと、して。まだ眠いのか?」
ぶんぶんと顔を振る。そしてさっきまで見つめあっていた彼女の方へと指をさすが。
「なんだ?…向こうの店をのぞきたいのか?」
「え?」
もう彼女の姿は消えていた。
でも彼女の正体はこの際どうでもい。ぐっと空いた手を握りしめながら、思考をめぐらした。
全身じっとり汗をかいている。
そんなことよりも、自分が気にしなければいけないことがある。
ゆっくりと自分の手を握ってくれているアオイの手に視線を移した。
「あ、アオイさん…」
「ん?」
チアキはしがみ付いていたアオイの手から名残惜しそうに、そっと離れた。そして一歩後退する。
「あの…私のことはいいから…大切な目的を果たしてね。」
「何言ってるんだ?」
「これからアオイさんは船を捕まえなきゃいけないんでしょ?早く街を出なきゃ、間に合わなくなっちゃうよ?…私は…ここからひとりで行けるよ。自分のことは自分でする。だからアオイさんは」
「馬鹿、おまえをほっとけるか―――」
「大丈夫だよ。」
チアキはできるだけ精いっぱいの笑顔を作った。
まるで仮面のよう偽物の笑顔。
心は本当は不満でたまらないけど。
でも、アオイさんはこの街から早く離れてもらわないといけないんだと思った。
そしたら、あのような未来が実現しなくて済むんじゃないかって思った。
街が悲劇の叫びが木霊しない様になるんじゃないかって思った。
私は単純にその結論を出した。
逃ゲ…テ…
「…今までありがとうございました。アオイさん」
「おい、待てよっ!!」
アオイが自分に一歩近づく前にチアキは急いで人ごみの中に駆け込んだ。
振り返ってはだめだと、自分に言い聞かせて、よろつく体を懸命に動かす。
ごめんなさい、
そして
ありがとう……
=第4章 少女と歌と世界と人 END=
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