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次の朝。


既にジールの姿はなかった。

いきなり現れたと思ったら、すぐまた姿を消してしまう。
今思えば、出会いもそんな感じだったな、とチアキは改めて納得した。


既に支度を終えたアオイは、チアキを起こそうと手を伸ばす。


すると体を一転させ、チアキは少し申し訳なさそうに言葉を紡いだ。



「アオイさん…」

「なんだ」

「まだ、怒って…る?」

「ああ、怒ってる」


アオイは即答だった。


そう、自分が気持よく声を出しただけでアオイの機嫌が直るはずがないのだ。


むしろ、拙い歌声を聞いて…というより怒られている状況で気持ち良く歌を歌うなど大胆かつ愚かな行為にすぎない。


「反省はしてる、…けど…」

「けど…?」

「後悔はしてない」


アオイは驚いた。


「だって、アオイさんは優しすぎるから」

「……バカ野郎」



チアキはいたって真面目のつもりだったのだが、軽くでこピンをされてしまった。

困った表情をしながら、アオイはチアキに悟られまいとすぐ背中を向け頭をくしゃくしゃかき回した。



「ところでアオイさんは、誰を…探してるの?大切な人なんだよね?」

「……」

「なんで、大切な人を探しているの?」

「それはお前には、関係ないだろ」


チアキは知っている。アオイはこの話題を嫌うと。

やっぱり、自分が思っている以上にアオイさんはまだ心を開いてくれてないんだと改めて思う。



「…うん…そうだね」




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あきゅろす。
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