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そして、自分の記憶の奥底から鮮明に蘇る少女の姿に恐れていた。


「うそつき!!」


なんて、愚かなんだろう。俺は。

あの時、まだあの一味がいると気づいていれば、またチアキを怖がらせるような目に合せなかったというのに…。



「ねぇ、アオイ」

「なんだ」

「チアキちゃん、すんげーアオイのペースについていけてないけど」


言われて、アオイが振り返ってみると、チアキはせっせと懸命に足を速めているのだが、つかまれる腕にてんで間に合っていないのにようやく気がついた。

チアキは体力もないので、町を出てすぐに息を切らしていた。

いや、原因はそれだけではない。

刻み込まれた傷を庇う様にして歩くので、どうしても足を早く動かすことができないのだ。


「…もしかして考えに明け暮れすぎて忘れてた?」

「……」


図星で何も言い返すことができない。ジールが自分を最低だーといった。

俺も、そう思う。


「………っち、」


アオイは足を止めて、チアキを担ぐように持ち上げた。


「っ!!!」

そして後ろに回しておんぶと言われる形をとると、何事も無かったように再び足を動かし始める。



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あきゅろす。
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