11 * ぼんやりとする意識の中で チアキは目を開いた。 「…おお、やっと目覚めたか…」 聞いたことのある男の声。 嗅がされた薬品の効果が完全に抜けていないのか、目眩を感じる。 少しでも身体を起きあがらせようと試みるが、その時になって漸くチアキは自分が硬い台座のようなものに寝かされていることに気がついた。 床には高そうな生地が敷き詰められている。 高い屋敷の中にいるということなのだろうか。 あともう少しで起き上がれたというのに、自分の身体を引き留めるものがそこにあった。 そう、どっしりとした手錠に繋がれて、動きに制限をかけられていたのだ。 「―――っ!?」 目の前にいる男達は笑っていた。 チアキの恐怖におののく表情を楽しんでいるようだった。 その男達の間を割って現れた、一人だけ別格の様な雰囲気を漂わせる男が自分に近付き、問いかけてくる。 「私を覚えてるのだろう?」 低い声。 髭をはやしたその男はチアキの前で立ち止まると、顎を掴んでこちらに振り向かせた。 大きな宝石を埋め込んだ指輪をいくつも嵌めているのが目にはいる。 「まだその当時君は幼くて、小汚い豚小屋にいれられた哀れな子供の様だったけれど、時がたてばとこんなにも変わるものなのだなと私は思うよ。人とはつくつぐ不思議な生き物だな、本当に今の君は比べ物にならぬ…」 男からつんと香るきつい香水。 おそらく身分が高いのだろう。 商人の男とは違い、貴族のような服装を身に纏う男が自分の体を舐めまわすように見ている。 [*前][次#] [戻る] |