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がちゃり。


向こうの扉が開く音がした。顔をあげると、囚人服を着た男が鎖で両手を縛られた状態で現れる。


そして用意された席へとすわった。


「お前がよんだのか…!」


男は唇を強く噛んだ。


「相変わらず、馬鹿面だな」


アオイは静かに視線を向ける。
表情は平然としてみえるが、元商人の男を軽蔑する眼差しで一瞥していた。

その態度をアオイは隠そうとはせず、寧ろ分かりやすくご丁寧に示していたので、男は気分を余計曲がらせた。



「一体、何の用だ…ッ!」

「聞きたいことがあった」

「ハンっ、この俺に聞きたいことだとぉ?」


元商人の男は、ぺっと痰を床に吐き捨てる。


「………」


どうやらこの男は自分に何をされてしまったのか忘れてしまったらしい。

いつもなら剣を鞘から引き抜き、瞬殺をやってのけるか、もしくは別の手で目上の者に対する態度を教えつけてやるのだが、話を進めたいのでアオイは静かにその行為を受け流した。


「それで。お前はチアキをいつ、どこで手に入れた」

「チア…キ?」

「俺に売ろうとした娘だ」

「……ああ、」


男は下卑な表情を浮かべにやりと笑った。


「チアキ、というのかあの小娘は…?」



小さくアオイは舌打ちをした。名前を言わなければよかったと。



「それで、チアキはお前になついたのか?
…いや、それともお前のただの憂さ晴らしに、チアキを手懐けて都合のいい玩具にでもしようとしたのかな?」


男は調子に乗ってからかう様に舌を転がす。


「もしくは、チアキという小娘ごときにお前は溺れてしまったのかもしれねえなぁ…?そんなによかったのか、チアキは?」

「アイツの名前を気安く呼ぶな。……殺すぞ?」


ぴしゃりと言葉を叩きつけ、アオイは凍りついた眼で男を睨む。

今まで生きてきた中でも比ではないくらいの威圧のオーラに圧され、男は漸く口を閉じた。




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