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あの商人にチアキをいつ、どこで、どのくらいの長さ捕らえていたのか聞けば、フォーテルシュ街にある教会で、チアキの身寄りを探す時にも、だいぶ条件が絞れて見つけやすいはずだ。
今更だが突き出す前に、アオイは聞いとけばよかったと後悔した。
ちなみに、あの商人はチアキが殺すなと言ったので、アオイは仕方なく警備隊に身柄を渡して牢屋にぶち込んで貰ったのだった。
じきに国家の誇る警察隊が囚人を引き取り、彼の罪に値する罰を与える事になるのだが。
なにしろこの町は警察隊の本拠地である都市から大分離れているので、迎えをよこすのに時間がかかるだろう。
ならば、まだあの男はこの町の警備隊に束縛されたままになっているはずだ。
「なぁ、チアキ」
「……」
「俺、ちょっと用事が出来たからよってくる。お前は先にこれを持って宿に戻ってろ」
「……」
アオイは苦笑混じりで、無反応なチアキの頭に手をぽんと置くと、くしゃくしゃに撫で回した。
「っ!」
「な?宿はすぐ近くだからわかるだろ?」
「……」
チアキは拗ねた様子を見せながら、でもしっかりとアオイから荷物を受け取った。
「んじゃ、宿でちゃんと待ってろよ」
アオイはそう言って別れを告げるとこの町にある警備隊の施設へと向かい足を速めた。
残されたチアキは、アオイの姿が人ごみによってかき消されていくのを見ると、突然自分の胸に寂しさの渦がぐるぐる回っているのを感じた。
一緒に、自分も連れて行ってほしかったのに…。
はっとなってから、顔をぶんぶんと横に振った。
だめだ。
自分はこれ以上迷惑かけたりしたらだめだ。
助けてもらえただけでも十分なのだから。
チアキはぎゅっと荷物を抱えると、もと来た道へと足を向けた。
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