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「……また会えるなんて!」

「お、お久しぶり…です」

「お姉さーーーーんっ!」



大きな帽子を被った少年はチアキの所に飛び出した。

まるで子犬のように、嬉しそうな笑顔でチアキとの再会を喜ぶ。

気が付くと自分の両手を少年ががっしり掴んで激しくそれを上下させた。

「わわっ」

「あのあと僕はずっと心配してたんだ…!いくら上からの命令とは言え、お姉さんを一人にして置いて行くなんて、僕は最低だよね!お姉さんはきっと僕が去った後も身体を休ませず探し続けていたんでしょ?それなのに全然役に立てなくて、辛い思いばかりさせてごめんね!」

「あ、あの…」

「でもね、僕は1秒たりともお姉さんを忘れた事なんて一度もなかったからね!本当だよ!どんなに忙しくたって、ずーとずーっとお姉さんを迎えに行きたいって心から思ってたんだ!」

「あ、ありがとう……」


もの凄く泣きそうな顔で詰め寄られて、チアキは苦笑いを浮かべながらも一歩一歩後退していた。

自分より小さくて若いのに、少年には罵倒されてしまう様な勢いがあったからだ。

少年はあっと大きな声をあげると、背伸びをし、そっとチアキの耳元に囁いた。


「ところでお姉さん」

「?」

「小石は…見付かったの?」



アオイに任され、探していた翡翠の小石。


チアキはあの夜知った。


ジールの話によると、小石などありもしない物だったのだと。


「…………はい、お陰様で見つかりました…」

「そっか…よかったね!」

「………はい…」


少年はチアキの手を取って、自分の手を重ねた。


「お疲れ様」

「………」


少年は愛しそうにチアキの手の甲に自分の頬をつけた。



少し罪悪感を感じながらもチアキは嘘がバレぬように微笑んで見せる。


「有り難う御座います…」

「―――導師様!」



和やかな雰囲気を突然ぶち壊すような、低く唸るような音の声が東方から聞こえた。


「………はぁ、何ですか?」


少年はがっくりと肩を落としチアキから手をどけた。


「……導師?」

「あ、気にしなくていいんだ。どうせ大した用事じゃないだろうし―…」

「導師様ァ!!」

「も〜…煩いなぁ、だから用件は何だってば」


全身鎧兜に覆われた兵士らしき者が二人を裂くように現れる。チアキは声量の大きさに思わず耳を塞いでしまった。


「こちら、地形の形状変異の資料は集まりました!故に導師様から帰還の命を受けに参上いたしたまでで御座います!」

「ち、地形の形状変異…?」

「ほら、崖の上に見えるでしょ館がさ?あの館に住む主人から信じられないような言葉が送られてきたんだ。何かもの凄い力を使った何者かに地形が壊されたって。それで上からの命令ということで、僕らが派遣されたんだ。また魔物の暴動かもしれないし犯罪者の仕業かもしれない。」

「そうなんですか…」

「といっても、今の方がぶっちゃけ景色よくなっちゃったよね!見晴らしはいいし、風がいい感じに吹きわたってるし、思ったほどの被害ではなかった感じかな?まぁ、魔物のサンプルはまだ採れなかったみたいだから、ただの崖崩れだと思うしね」

「導師様!どうか我らに命を!」

「……しつこいなぁ…もう。わかったってば」

「では導師様!」

「うんいいよ、僕達用も終えたし帰還しよう。その指示を皆に伝えといてね」

「了解致しました!」



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