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「ぅ……」



頭に鋭い痛みが走る。



「………ぅ………ぁ」


何だか自分は昔へタイムスリップしていたように、過去の出来事を旅していたようにとても感じた。

だからこそ今まで長いこと眠りについていた様にも感じた。



「………痛……ぃ…」


思わず胸を押さえる。



「……っ」


過ぎた事だとわかっていてもやはり胸は癒えた様に思えたこの傷を抉りだす。



残酷な思い出たち。



私は別に被害者ぶっているわけではない。自分を哀れんでいるつもりでもない。



でも、やはり辛かった。




汚くて、醜くて、あまりに不幸染みて、あまりに虚しい、蘇って欲しくはない自分の歴史。




――――でもそのなかにひときわ輝いて照らす記憶があったのも確かだった。








今の自分にはもう輝きなんて、栄光の一時でさえももう意味が無いとはわかっているが。




「………」



それにしても暗い。
ここは、どこなのだろうか。



頭はぼんやり曇りがかって、うまく働かない。





でも、徐々に自分がベランダから飛び降りたことは思い出した。


(じゃあ…やっと、楽に…なれたのかな……)


我ながら結局は諦めの道へと進んだのに、チャンスを与えられることを強く願う自分に嫌気が差しつつも、笑えた。



なんておこがましいのだろう自分は。



明かりがないので、そとの月明かりだけが頼りだった。


ここは、天国…それとも、地獄なのだろうか。


そんなのはどっちでもいい。


どっちにいても貴方にはもう会えないのだから。




顔を横にゆっくりと向ける。



「…気が、…ついたのか?」


聞き覚えのある声に、少し驚いた。


いつから横にいたのかまったくわからないが、男が自分を心配して顔を覗き込んでいるのはすぐに察知した。





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