9 「この下は…川…か?」 冷たい夜風が二人を包む。 チビ女の腕をつかむと自分の方へと抱き寄せた。 気を失っているらしく、顔色もすっかり青ざめている。 だらりと、顔が傾いている。おそらく出血が多く、それによる影響だろう。 チビは後先考えず、自分の腕を切りつけた。 いや、後を考える余裕もなかったのだろう。 「っち、この大バカ野郎が!」 舌打ちをして、 力の解放を始めた。 赤く燃え上がるような痛みを感じたが、いつも馴れていることなので、紅の紋章が自分の瞳を侵食するのを待った。 もう時間がない。 力を解放して、二人とも助かるか。 それとも、川と接触して体が砕けるか。 ただの賭けに変わっていた。 「っざけるなあああああっっ!!!」 距離を失いかけるその瞬間、大きな風が二人を包んで、吹き上げた。 [*前][次#] [戻る] |