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「で、も……」

「どうした…?」

「私は……の…じゃない」

「?」


掠れた声で上手く聞き取ることが出来なかった。俺も、あの男も首を横に傾げる。

しかし俺にはその時見えた。
死んだような瞳から溢れ出た真珠にも似た大粒の涙が、白い頬を伝って流れて行くのが確かに見えた。


「私は…の、じゃない………っ…私は、ものなんかじゃ、…ない……っ!!」



チビは泣いていた。
そして訴える。

あいつの言葉はまるで俺に向かって発せられているものではないかと思った。
目を見開きながらも、あいつの続く言葉を一字一句逃さぬよう聞き耳を立てる。


男は慌てて泣き出すチアキは鎮めようとする。

「ど、どうしたんだい…?」



するとチアキは男の腰に掛けてある小刀を抜くと自分の腕にそれで切りつけた。


「!!」


零れおちる鮮血。白い肌に発色の良い紅の液体が下に流れていく。



「私は人間なんだよ…っ!ものなんかじゃないんだよっ?」


男は唖然としている。
驚かせて眼を白黒させていた。


それでも、あのチビ女はこぼれる涙を拭かず、傷をいたわらず、ただ懸命に出るだけの声を出した。


「だれかの役に立ちたかった……!でも、それは人として役に立ちたいの!…私は必要とされたかった……我慢してきたのは耐えるためなんかじゃ、ない、…っいつか、一人の人間として必要としてくれることを待っていたの……っ!!私を私と見て欲しかっただけ!!」



……嘘だ。



俺はあのチビの存在を疑うような眼差しで見る。



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あきゅろす。
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