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「…そんなにあの男がいやなら、私とともにここに住むがいい。」


「……っ!!」


男の優しい声でいきなり周りが静まり返った。
まるで批判の声が全て無かったかの様に。


「何不自由な目にはさせないよ。約束する」


息を多少荒げながら顔をあげる。

男がチビ女の顔の輪郭をなぞると、頬をぺろりと舐めあげたのが見えた。


「……チビ…?」


先ほどまで震えていたチビはまるで精密に作り上げられたろう人形のように固まって、天井を見つめていた。

虚ろな眼差しだ。
とても生きている者のする表情ではない。

死んでいたように見えた。



『…そんなにあの男がいやなら、私とともにここに住むがいい』


確かに……。

あの男に媚びってチビ女は俺から離れていけば、少なくとも幸せに生きていけるのではないかと思った。

どうも俺は無意識にでもチビ女に手をあげてしまう癖が馴染んでしまったようだ。

あいつが俺の傍にいたって、恐らくその華奢な体がどんどん壊れていくだけだと思い浮かべる。


「私が君を守ってやろう。欲しいものもなんでも授けよう。なんでも言ってくれ…」

「守る、か……成る程な…」



段々見えてきた展開に飽き飽きしてきた。


これ以上眺めていようとも、きっと事の成り行きは自然に流れていくものだと。


あのチビは間違いなくあの男を選ぶだろう。



そう思って、そろそろ退散を考えた。



すると。





「で、も……」


微かだが、ちびの声が聞こえた。

小さいが、俺の耳にはしっかりと届いた。
俺は即座に部屋の内へと振り返る。


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