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「アオイ…なんであそこまで…」
「おいおい何言ってんだよ?」
アオイはジールの質問を鼻で嘲笑う。
「俺は当然の事をやっただけだろーが。つーかよ、あの餓鬼は人のものに無断で手を出しやがったんだぜ?役立たずのクセによぉ」
チアキをこの村一番の権力者に売って来てから借りた宿に戻ってきたアオイは、宿からだされた食事を平然とした態度で平らげていく。
「…それでもやり過ぎじゃないのかな…。せめて、せめて他に方法があったんじゃないのかな…」
ふと感じたアオイの冷ややかな視線。
思わずその先の言葉を飲み込んでしまった。
―――――怖い。
なぜこんなにも冷たく出来るのだろうか。
アオイはどこまでも冷めきった表情のまま俺を睨んだ。
「はっ、なんだよそれ?今更になってあのチビを助けてやりたかったってか?
でもなぁ、ジール。見て見ぬふりをしてたテメーじゃ、それはただの偽善者っていうんだぜ、世間ではな?」
「……」
そして俺はアオイの言葉の前でもうなにも言えなくなる。
そう、自分でもわかっていたつもりだけどこれでは本当にただの偽善者だ。
アオイを攻めたって結局助けなかった自分も同罪であることに違いない。
今更になって罪悪感を感じても全てが遅すぎるのだ。
ジールはそんな自分を悔やむように唇をきゅっと噛み、それから深く黙り込んでしまった。
「……っち、」
白ける雰囲気に嫌気がさしたのかアオイは椅子から立ち上がると、部屋の扉を強引に開けて出て行ってしまう。
ジールは開いたままの扉を見て溜め息をふぅ、と吐いた。
どうすればいいのだろうか。
この靄がかった気持がどうしても振り切れない。
アオイがまだ苛ついているんだなと察して余計に反論の声も上げられない自分にジールは複雑な顔で、食べ終えた皿を簡単に片した。
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