20万打記念リクエスト小説 1 (あきさま、名前無記入さまリクエスト、タロタマの喧嘩でご主人様あたふた・・・、です。) 桜庭の携帯に北野から電話が入ったのは、帰宅途中の車の中であった。 「なんだ。」 『お疲れ様っす!頭!助けてくださいっ!』 「・・・あ?」 『環さんと太郎さんがっ!あ、ああ!!だめっすよ!』 ゴトと鈍い音がして、北野の声が遠ざかって行く。 一体何ごとだと耳を済ませる桜庭の耳に、遠くから愛しいペットたちの声が聞こえてきたのだった。 『青木!ふっざけんな!ばーかばーか!!』 『ごめんって言ってるのに、しつこいな!第一、バカって言ったほうがバカなんだよ!!・・・ってぇな!やめろよ!殴んなよ!反則だろっ!』 『うるさい!青木が悪いんだし!!俺悪くないもんっ!』 『・・・ちょ、ちょっと、二人とも落ち着いてくださいっす。ほら!』 『もー!北野さん、邪魔!!』 『大体、どっちの味方なわけ!?』 『そ、そんな、俺はどっちとか・・・、』 『じゃあ口出ししないでよ!どっかいけ!!』 『紫苑、北野さんになんてこと言うんだ!謝れ!』 『うるさい、うるさいっ!俺は何も悪くないもん!!悪いのは全部青木だもん!!』 「・・・。」 黙り込んでしまった桜庭に、助手席に乗っていた杉谷が振り返る。 「どうしました?何かありましたか。」 「・・・・・・いや、・・・・・・・・・あとどれぐらいで着く?」 珍しく言い淀んだ桜庭に面食らいながらも、これに答えたのは吉田だ。 「えーっと、あと20分ぐらいですかね?」 平日の19時過ぎ、道はそれなりに混んでいる。 「なるべく急げ。」 「うっす。」 黒塗りのリムジンが裏路地に入っていく。近道に入ったのだろう。 再び携帯を耳に当て、思わずといった風にため息をつく桜庭を見て、杉谷は物珍しさに何度か目を瞬かせたのであった ・・・・・ 杉谷を伴ってマンションのドアを開けた桜庭は、部屋の中が静寂に包まれている事に疑問を感じながら、早足でリビングに入った。 リビングの扉を開けた桜庭は、珍しく体を硬直させる。 飛び散った食器の破片、破れたカーテン、何かをこぼして染み付いたラグに、大型のテレビにはフォークが刺さっているのである。二人がよく遊んでいるゲーム機などは、真っ二つになっていた。 「・・・これは・・・。」 桜庭の後ろを着いてきた杉谷も、惨状にただ唖然としている。 「何があったんです、北野。」 その台風が通ったあとのリビングで、一人座り込んだ北野が、杉谷の言葉に泣きそうになりながら振り向いた。その染めて不自然に黒い髪の毛は、何故か前髪だけチリチリと焦げているのであった。 「・・・あ・・・、お疲れ様です。おかえりなさいっす。あの・・・それが、俺もよく分からないんっす・・・。」 北野が何かを大事に抱えている。よく見ると、ディスプレイを割られたスマートフォンだ。北野が携帯を壊されるのは、これで2台目だった。 「分からない?」 「はい。ちょっとトイレに行った隙に、もう喧嘩が勃発してて・・・、原因を聞いてもヒートアップしててわからないし、二人が本気で暴れだして、それを俺が止めれるわけもなく・・・。はっはっは。」 無表情で笑う北野の目からとうとう涙が溢れた。哀れである。 「そうか。で、二人はどこだ?」 「あの・・・、環さんはトイレで、太郎さんは自室に閉じこもってるっす。」 「分かった。おい、杉谷。」 突然名前を呼ばれて、ぽかんとしていた杉谷は、一テンポ遅れて返事をした。 「・・・はいっ、室内クリーニングは今日はもう無理ですが、明日一番で出来るよう、手配しておきます。」 「ああ。わりぃが、割れたガラスだけ頼む。」 「分かりました。」 「北野。携帯は今度新しいの買っておいてやる。」 「は、はい!ありがとうございますっす!俺もガラス片付けます。」 「おう。・・・俺はちょっと、へそ曲げ坊主共を説得してくる。」 「「頑張ってください(っす)。」」 ため息を吐いてリビングを出る桜庭の背中には、哀愁が漂っていたらしい。 ・・・・・・ 桜庭は先ず自室にいるという太郎の元へ行くことにした。 しっかり鍵がかかっているドアを、何度かノックする。 「タロー。俺だ。中に入れてくれ。」 暫くの沈黙ののち、蚊の鳴くような声で返事があった。 『・・・・・・ご主人様?』 「ああ。」 『そこに、紫苑いない?』 意外と声は落ち着いているようである。 「いねえ。」 『待って。開けるね。』 「ああ。」 少し待って、部屋のドアが開いた。 泣いているのかと危惧していたが、違うらしい。 そこに立っていた太郎は、思いっきりふてくされた顔をしていたのである。 [次へ#] [戻る] |