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桜色に染まる
捨てられわんこの一生
(しがみついて離れないに出てくる高遠の舎弟の話です。痛ましい表現がありますので注意してください。)

シュウが最初に捨てられたのは、物心がつく前、一歳になる前のことであった。

本人は覚えてないが、シュウの両親はくずだった。
子供を放置してパチンコで遊び歩くような、典型的なクズ野郎だ。
二人共年若く、それなのに特定の職には付いてない。パチンコで日銭を稼ぎ、なくなったら仕方なく、日雇いのバイトをする。それも出来なくなったら、とりあえずセックス。
それで生まれたのがシュウだったのだ。
こんな両親のもと、とにもかくにもそこまで生きながらえたのは、奇跡とも言えるだろう。
生まれて初めて迎える夏のある日、巡回中の警備員に蒸し焼き寸前の姿で救いだされた小さな子供、それが、シュウだったのだ。

シュウは施設で保護されることとなった。
これで、蒸し焼きの心配はなくなったのである。

シュウはこの施設で2年過ごした。
そして、3歳になってすぐ、10年間の不妊治療をしても尚子供に恵まれなかった夫婦のもとへ、もらわれることとなったのである。
最初、シュウは、とにかく甘やかされた。
出来なかった末の、(血は繋がってないとはいえ)一人息子だ。
それにシュウは見た目だけなら良かったし、黙っているだけだったら可愛らしい子供だったので、それはそれは、花よ蝶よと育てられたのだった。

ーーー10歳の時までは。
シュウが10歳になる頃、その夫婦に妊娠が発覚したのである。
不妊治療を10年、そして、諦めてからの、7年。まさかの妊娠であった。
3人でお祝いしたまでは良かった。否、生まれるまではシュウも幸せだった。
赤ちゃん、可愛がってくれる?うん。なんていう、当たり前の会話もあった。
問題は赤ちゃんが生まれたあとだった。

母親はやはり、自分で腹を痛めて産んだ子供のほうが可愛くなってしまったのだ。
シュウは10歳になっていた。難しい年頃に片足を突っ込みかけていたのだ。それに、産みの両親の遺伝なのか、生まれ持ったものなのか、シュウはあまり頭が良くなかったのだ。
授業中は黙って5分も座ってられないし、わからない問題があると、その場で教室を逃げ出してしまう。宿題をやったことだって、ない。
そんな育てるのが難しい子供より、生まれたばかりの小さい赤ちゃんのほうが、母は可愛かったのだ。

「シュウちゃんはどうしてきちんとできないの?」
「ママを困らせたいの?」
「ーーーやっぱり、自分で産んだ子のほうが、かわいいわ。シュウちゃん、見た目は可愛いけど、中身は可愛くないもの。」

育ての父も、シュウと母の間に入って奮闘したが、やはり、自分の血が入った子供のほうが可愛かったようである。
ごめんな、と言われたが、シュウの目を見てはいなかった。
そうやって、シュウはまた、捨てられたのだ。

今度は、育ての親の両親、祖父母に拾われることとなったのである。
流石にシュウちゃんが可哀想でしょう、うちで預かるわね。祖父母はそういったのだ。

だが、年老いた二人に、暴れん坊のシュウの世話は難しかった。
何しろ、学校に呼び出される頻度が普通ではなかったのだ。
隣の子を殴った、なんていうのはしょっちゅうだった。
女の子のポニーテールを切り落としてしまった、なんてこともあった。
前を歩いていた子の背中を突然蹴ってしまった。だなんて、祖父母には理解出来なかった。

シュウくんは少し、落ち着きがないですね。ーーどうですか、支援学校なんてものも考えてみてはーー。
昔気質の二人には、支援学校なんてものは何なのかすら分からなかったし、よろしくと言った息子夫婦は知らぬ存ぜぬであるし、肝心のシュウは、また問題を起こしてしまう。
学校に行っては頭を下げ、被害者の家に行っては頭を下げた。
万引き、補導、ーーー痛む腰をさすり、二人は何度も警察へ出向いた。
二人は、シュウを引き取ってから一気に老けこんでしまったのだった。

ーーシュウはただ、抱きしめて愛してると言って欲しかっただけだったのだ。
シュウはいい子だね、可愛いね、自慢の息子だよ、と、生まれてきてくれてありがとう、と、言って欲しかっただけなのだ。
ただその方法が、分からなかったのだ。
だってやり方すら、教えてくれる人がいなかったのだから。

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