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読み物
ものさし【三、☆▽、馬岱+雲緑】
雲緑は、沈む太陽に当てるようにものさしを窓側に向け、とある部分に爪を立てため息を出した。
宿題にすら手を付けられず、雲緑は変わらずに呆然とものさしの一点を見つめていた。

今日の、休み時間に他の女子生徒が言っていた言葉が雲緑の頭で繰り返し再生された。

『16cm差のカップルは他人から見てベストカップルなんだって!』

今までならそんな事気にすらしていなかった。
私も乙女だな…と雲緑は机の上に顔を伏せると、すぐに顔をあげ頭を思い切り横に振り宿題を片付け始めた。


**

水が流れる音がする中、雲緑は相変わらず呆然と考え込んでいた。
悩みは先程と変わらず、ものさしの件。

『雲緑…さっきから茶碗しか濯いでないぞ?』

隣りから聞こえる声に我に帰り、首をその方向に向けると、馬岱が右手を出したまま雲緑を見下した。

『す、すまない。』

雲緑は茶碗の水気を切ると慌てて馬岱に渡し、次の皿へと手を伸ばさずため息を吐き出した。

馬岱はそれを横目に馬超がいない事を確認すると茶碗を拭きながら話始める。

『何かお悩みですか?お嬢様』
『そんな呼び方するな…。従兄だろ。』

雲緑はうんざりするように皿に手を伸ばし泡を落とす。だが顔は呆然としたままで、馬岱は「このままじゃ皿一枚なくなりかねない。」と思い、雲緑から皿を無理矢理とりあげる形で拭き始める。
『なぁ…岱』
『ん?』
『貴様いくつある…。』『…………なにが』
『……なんでもない。』
雲緑は皿を手に泡を落としていくと、馬岱に渡すが、受け取る感触がなく雲緑は隣りを見た。

『だから何がとかなんでって言われたらちゃんと質問に答えなさいっていつも言ってるだろ。』

雲緑を睨み付け、皿を取るともう一度「なにが?」と笑顔で言う。
雲緑は頭を垂れ、ため息を吐き出すと質問の続きを始めた。

「身長…いくつある。」馬岱は子供のような質問に目を丸くし、戸惑うように質問に答える。

『ひ…182だけど…なんで?』
『…………なんでなんで言い過ぎだ。』
『なに?身長で悩んでんの?』
『…………』
『もっと伸びたいとか?』
『これ以上伸びたら困る。』

雲緑は出しっ放しにしていた水を止め、タオルで手を拭くとスリッパの音をならしソファに腰かける。

馬岱は首を横に倒し、暫く考え込むと「これはなにかあるな」と口元をにやつかせ、マグカップにコーヒーを入れると雲緑の後を追うように足音を近付けた。

『はい』
『頼んでない』

雲緑は目の前に出されたコーヒーに目を取られるが受け取らずただ腕を組み呆然としていた。

『なにか悩んでるんだろ。お従兄さんに言ってみなさい。』
『なにがお従兄さんだ。馬鹿岱』
『でも俺、叔父上の兄ちゃんの子供だもん。しかも誕生日は俺のほうが早いよ。』

馬岱は飄々と答えると音をたて入れたてのコーヒーに口をつけた。
その言動に雲緑は苛立ちながらも『……………あっそ』と素っ気無く答え出されたコーヒーにしぶしぶ口をつけ、先程の質問の続きを馬岱にぶつけてみる。

『………なんだ?それ』
馬岱は目を丸くし、まるで子供じみた迷信に開いた口が閉じない。

『だって……他の者がそういうし…。』

雲緑はそう言うとコーヒーを啜り、ため息をついた。
馬岱は、馬鹿げた台詞にため息をついて片肘をつき雲緑を見る。

『あんなぁ…おまえそんな事気にするたまか?』『なっ!別に私だってこんな事で悩みたくはない!!ただ…』

雲緑は肩を落とし、マグカップをギュッと握り締めた。

『なんとなく…気になるのだ。周りから見て私たちはどうなのだろうかと…。』

馬岱は肩を落とした雲緑を見つめ、目線をずらすと手を雲緑の頭に落としクシャクシャと撫でる。もちろん、雲緑はそれに抵抗するのだが、可愛い従妹の悩みに馬岱の口元が緩んだ。

『雲緑、いい事教えてやろうか』

馬岱は、雲緑の頭から手を離し手招きをすると雲緑の耳元に顔を近付け手を添え小声で
『それって本当はベストカップルじゃなくてキスがしやすいって話もあるんだよ。』

雲緑は目を丸くして馬岱からゆっくり離れると顔を真っ赤にして呆然とする。
それが面白くて仕方がなく、大声をあげて笑いたいが痛い目に合いたくはないので我慢していた。
『あの人は触り魔だし、淡泊な雲緑からしてみたら12cm差が一番いいんじゃない?』

そういうと雲緑の頭をまたクシャクシャとし、自室へと戻っていった。





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