忍びの意味は我慢
名字との時間は無言で苦痛であるようなそれでいて自然であるような不思議な感覚だった。これが名字の言っていた"気配を溶け込ませる"ということなのだろう。
「なんで名字はひとりで居られるんだ。」
ポツリと話しかけた私に名字はどこかに向けていた視線を私によこした。
私も昔友に避けられてひとりになった事がある。私の誕生日の準備という名目だと言うのにそう言われても私は酷く寂しかった記憶がある。
しばらく反応がないのでまた会話を途切れさせようとしているのかと思ったが名字は会話を始めた。
「平は知ってるか?」
「なんだ?」
「忍びっていうのは我慢するって意味だって事」
それぐらい忍びなら誰だって知っている。
1番最初に言われる重要な話だ。
忍びに年齢なんて関係はない子供だからと助けてもらえることも殺されないこともない。邪魔だったら排除される。ただそれだけ。例外なんてない。
それにしてもいったいお前は何を我慢している。
今怪我をおっていることか?私や七松先輩が喋りかけること?忍者であること自体を?それとも…
「お前は何を我慢しているんだ?」
「平には分からない事だよ」
私は自他共に認める程にプライドが高いそんなお前には無理だと上から言われてはすごく腹がたつ。
「私は頭がいいのだぞ」
「そうだなはたから見ても平は頭がいい部類に入る。それに美しく実力派で聡明。」
私を卑下したかと思えば褒める本当に何なんだこいつは…
美しいといわれて嬉しいはずなのに私はどうしても素直に喜べずに口を開いた。
「私はお前の瞳の方が美しいと思うがな」
ふと漏らすように出た言葉に自分もビックリした。
いつもだったらあやかって自分で自分を褒めるのに。
けど今は彼の真っ黒な瞳に勝てるものはないと思った。全てを悟ったようなそれでいて何も感じていないような瞳
そんな瞳の彼は驚いたようにコチラを見ていた。
「な、なんだその顔は…」
「…珍しいから」
「え?」
「いつもだったらそこで自分を褒める、違うか?」
なぜそれを知っているのか私は度肝を抜かれたがあぁこれも彼がしていたことの成果なのかとスッと頭で理解した。
「私だって綺麗なものは綺麗だと言える心を持っている。」
「そうか。やっぱ関わらないと分からないこともあるんだ。」
名字はそう呟くとまた静かになった。
そのあとすぐに私のグループの奴らが無傷とまではいかないが軽い怪我だけですんだ。
名字が来なかったらこの中に朝日の拝めないものが居たかもしれないな
私は彼にそっと囁いた。
ありがとう、と
(でもきっと成績は散々やんね)(…そういうときもあるさ)(まぁみんな生きてんだしいいんじゃん?)(まぁそんな所で許してあげましょうか)
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