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少し彼に近づいた


敵に見つかることなく無事集合場所である洞穴に逃げ込んだ私は担いでいた名字を下ろし傷口を頭巾で縛り上げた。
名字は苦痛に顔を歪めはしたが声は出さなかった。



「これでひとまず大丈夫だろう」

「あぁすまん」

「私達こそ。お前が居なかったら誰か見捨てることになっていた。」

「そんなことない」



名字が会話を切りたがっているのが分かっていたがふたりきりでいると何をしていいか分からなくなる私は無理やり会話文を見出だす。



「あ…!そ、そういえば名字のグループの奴らは?!」

「それなら大丈夫だ」

「何が大丈夫だ。次集合場所に来た奴にお前が傷ついたことをお前のグループに知らせに行かせる。」

「俺はひとりだから」

「ひとり?!」



あっさりと言いのける名字に私は度肝を抜かれた。



「ひとりの方が何かとやりやすいし」

「しかしこの戦場に…」



味方もなくひとりどんなに怖くて恐ろしくて足のすくむものだろうか…



「平が恐れるような事じゃない」

「な…!誰が恐れなど!」



思っていることを言い当てられたからか私は少しむきになって言い返した。



「俺には分かるよ。いつも見てたから。」

「!」

「…引くなよ。学園長命令なんだ。5年の先輩にもいるだろ?変装名人の。」



じゃあ名字がずっと私達と関わらず見ていたのは彼が望んだ訳でも嫌な訳でもないんだ。



「客観視。それを磨き込め。気配は消すのではなく溶け込ませろ。そういわれている。」



彼が話しているのは紛れも無く自分自身の事
それだけで七松先輩より名字に近付いた気がした。



単純明解



(…あれ俺滝相手になに話しているんだ?)(七松先輩より私…!)


あきゅろす。
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