あいつが気になる
気になる。馬鹿な私にはちゃんとした理由は分からないがなぜかあいつが気になる。
何だか消え入りそうな雰囲気に手を伸ばしたくなる。
今日初めてあいつを見たのは朝食の時
五年の久々知が豆腐と叫んでるのを聞いて昼に出るであろう豆腐を置き逃げした瞬間。五年生の奴らは助かったと喜んでいたが誰が置いたのかは分かっていなかった。
それでも五年生なのかと怒りたくなったと同時になんであいつに気づいてやれないのかと悲しくなった。
その次は授業中暇だったから外を眺めたら実習帰りのあいつが居た。
けど「お疲れ様」といいあえるような友のような存在があいつの周りにだけない。
無視とか餓鬼臭いんじゃないか?そう呆れると同時にひとりを苦にもしないあいつに切なくなった。
昼おばちゃんにランチを頼むと中にあいつもいた。
あいつは年上が嫌いだから金吾を使って喋りかけさせた。
本当は自分で話し掛けたいけど話し掛けられない自分の歳に溜息を吐いた。
せめてあいつが体育委員だったらよかったのに
夜委員会のマラソンから帰ると留と竹谷が体術の鍛練をしてた。
二人とも熱中しているのは見て取れるが鍛練の中にあいつが入り交じっているのには気づいていない。
私はどうしたらみんなにあいつを気づいてもらえるのか考えたが分からなかった。ほら私馬鹿だし。
「先輩?どうなさったのですか?」
「おぉ滝夜叉丸か。いつものあいつだ。」
滝は私の指差す方向を見てあぁと言った。
「なぜそんなに名字を気にするんですか?」
「あいつはそこに居るのに居ないんだ。」
滝の答えにハッキリと速答した。
しかし滝は私の答えに眉間を押さえた。
「どうしたんだ?」
「いまいち意味が分からないのですが…」
大雑把に説明しすぎたか。頭のいい滝夜叉丸なら理解してくれると思ったが…
私は仕方なしに自分の思っていることを述べる。
「あいつ自身は居るのに気配がないんだ。元々そこに存在しないような。」
そんなあいつに私は手を差し延べたいのに…
君はその手を無視してく
(滝に一人であいつを見つけれるように鍛練してあげる)(いや、もうこれから鍛練など体が持ちません!)(だって来年からはあいつを見つけてやれるのは一人も居ないんだよ?あいつ本当に独りになっちゃう)
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