愛の喜びを知ろう
先輩と俺は薄暗い部屋の中でおやつを食べていた。
なんでわざわざこんな所で…
しかも先輩はチラチラと天井を気にしている。もしやネズミでもいるのだろうか。忍者の方ではなくて本物の。
「名字には愛すべきモノはないのか?」
先輩は真上を見ながら聞いてきた。何があるのかは気になるがあいにく俺は消すのは得意だが探るのは得意ではない。つまり本当になにかいるのかさえ分かっていないのだ。
「愛すべきモノですか」
「そうだ」
「特にないです。」
先輩はその返事に人を馬鹿にしたように笑った。
「それがなにか」
「そうか。いないのならいないで別にいいよ。」
先輩は笑いが治まらないようで腹を抱えている。本当に何なんだ。
「でもお前愛されたいのだろう?」
「今はそんなに…。もう慣れましたし。」
愛されたかったのは何年も前の話で今はこの学園から居場所がなくなるのを防いでるだけだし…
俺は完結したことなのでぶっちゃけどうでもよかった。しかし先輩はまだ笑いながら「いやお前も愛す喜びと愛される喜びを知るべきだ。先輩は雷蔵達が私自身の存在を許し居場所を作ってくれた。その時の喜びは言葉にできない。」と言い切った。
けど笑いながらだったためか全然説得力がない。
そして先輩は何かを考えたあとひらめいた!みたいな顔をしていた。俺はこの顔を知っている。この先輩がいたずらを思いついた時の顔だ。嫌な予感しかしない。
「そうだなぁまずは甘えろ。」
「いや…甘えるって誰に」
「んー私とか?」
やっぱりふざけてらっしゃる…
俺は委員長委員会のおやつを頬張った。
そういえばここの委員会の一年生坊主達はどうしたのだろうか。それに先輩の視線も気になる。
先輩は天井を見てにやりと笑ったあと「…もしくはそこに隠れていらっしゃる七松先輩とか?」と言った。
……いや
「は?」
「名前!そういう事なら私に甘えとけ!!」
俺が呆然とすると同時に先輩が天井板を外して出てきた。話を聞いていたのか…
呆れる俺を余所に先輩は腕を広げて「ほら来い!」と言う。が俺は生憎そんなことをされてもどうすればいいか分からない。躊躇をする俺に先輩は首を傾げる。
「なんだ嫌なのか?」
「そういうわけではないですけど…」
「七松先輩より私に甘えたいのだろう名字」
「それも違うけど」
「そんなキッパリ言うなよ…」
「そうかじゃあ私の胸に…」
「先輩」
話にオチがつかない。そう思った俺は自分で話の流れを途切れさせた。
「先輩、俺…」
「なんだ名前」
「甘え方とか分かんないから無理です。」
親が親だったし甘えることなんか出来なかったし
俺はどうしようもなくただ目をそらすと先輩は「なんだ。そんなことか。」といい笑った。
そんなことって…結構な問題だと思うけどな。甘えろと言った相手が甘え方分からないっていうの。あいかわらず考え方が無茶苦茶な人だ。
俺は今たぶん馬鹿にしたような目をしてるんだろうが先輩には関係ない。先輩はノープログレムと言いたげな顔で近づいてきた。
「安心しろ!私が甘やかしてやろう!」
そう言うやいなや俺を抱きしめ頭をぐちゃぐちゃにする。
俺はすごい力で頭を揺さぶられ先輩の腕から逃れようともがくと先輩は何を思ったか抱きしめる力を強くしてきた。
「え、ちょ、やめ…っ」
「ほら甘やかしてやっているのだから大人しくしろ!」
何 と い う 暴 君 だ
けど俺はこんなにも人の温かさに触れたことがないからか顔に熱がたまっているような気がした。
けどやめてほしくない。なんか恥ずかしくてやめてほしいけどやめられたら寂しいようなそんな気分。
俺は永遠にこの時が続けばいいと思った。
過去の清算
(俺の過去は穴の空いた壁なみにボロボロだけど)(代わりにそんな穴の空いた壁に漆喰を塗ってくれる)(そんな人達を見つけた)
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