俺と先輩の共通点
先輩とふたりきりだがどちらもしゃべらないために呼吸の音だけが虚しく響く。
「俺は…」
「なんだ?」
「俺は金を使ってまで救う価値があるのでしょうか」
「それは何も知らない私が決めれることではない」
今の言い方だといい加減話して楽になれと言っているようだった。
完璧すぎる先輩の作戦勝ちだ。
今まで誰にもすべてを話したことがなかったからドギマギしたが俺はなぜかそれをスラスラと言える気がした。
空気をめいいっぱい吸い込んだあと空気を漏らすようにゆっくりとしゃべった。俺が生まれて俺の学園にくる前。
俺には父が居ません。
それに分かりません。
母は水商売をしていましたから。
だけどそんな時俺が出来てしまったんです。
金がないのに金も稼げない。
あの人は俺が出来てもギリギリまで水商売をしていましたがついに生まれてしまったんです。
それからは俺はもっぱらあの人の怒りのはけ口でした。
“痛いよ母さん!”
“うるさい!あんたは黙って殴られてな!”
“うぐぅ…ごめんなさ…っ許し…”
“うっとうしい…うっとうしいのよ!”
“俺を愛してよ…母さ…っ”
“あたしを母さんと呼ばないで、ヘドがでる”
「愛されたいのに母さんと呼ぶことさえ拒まれる。俺にはいないふりをすることしか喜ばれない。俺はあの人に苦痛以上の憎しみを持っていた。」
そういいあんたにその苦しみが分かるのかと意地悪な質問をした。
なんかまだ完敗したことで腹がたっていたらしい。
「私も同じだ。」
「……え?」
思ってもみない答えだった。けど先輩の顔はいたって真面目で真摯的な目だった。
「私も昔虐待をうけていた。」
「先輩、も?」
「私の場合はただ私の顔が気に入らないのだと言われた。」
「どうして…」
「村1番の美男美女の夫婦から生まれたのが私だった。綺麗な夫婦から生まれるのだから綺麗なのは当たり前。なぜあなたはそんなに見苦しいの?だってさ。そんな事があったから他の奴よりかはお前の気持ちが分かってやれる。」
「…すいません。そうとは知らずに。」
俺は心の底から謝った。軽率過ぎる質問だったと。
けど先輩はいつものニヒルな笑みを浮かべて「後輩が辛いのを助けてやるのは当然の事だろう?」といった。
「そういえば自分に価値があるのかと言っていたな。」
「えぇ」
「お前自身には十分に価値がある。私が保証しよう。」
「ありがとう、ございます…」
「もう我慢する事はない。人生の先輩私が言うのだからな。」
先輩の言葉に俺は笑みを漏らした。
自分の過去と
(ひきかえに)(手に入れた)(自分の価値)
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