小説 俺と少女 今から十年前のことだ。S博士がアンドロイドを作った。 それ以前にもアンドロイドは作られていた。だが、そのアンドロイドはそれ以前のものとは違っていた。 ――そのアンドロイドには感情というものが存在していた。 アンドロイドはそれからも進化し続けている。 俺は教科書に載っていたその文章を音読すると、隣にいる少女に目をやった。 少女の外見はとても幼く可愛らしく見える。外見だけだが。また、少女を初めて見た人は少女を見てある色を連想するに違いない。 ――白。 少女の肌も、髪も、身にまとっているワンピースも白い。 少女は不機嫌そうに目を細めると俺の教科書を奪い取った。 「S博士の努力がこんな短い文章でしか表されないなんて」 少女はそう言うと、一ページにも満たないその文章を睨むように見つめた。 俺はその言葉に思わず呆れてしまった。 「おいおい。自分が教科書に載っている喜びとかはないのか、シロ?」 シロと呼ばれたその少女は俺を睨みつけてきた。 「私は偉大ではないけど、S博士はとても偉大な人よ? そんな彼に対してこんな文章だけしか説明がないのよ。おかしいでしょ?」 シロはS博士をとても尊敬している。それもそのはず。彼女こそがS博士により作られた最初の「感情のあるアンドロイド」だからだ。 [次へ#] [戻る] |