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短篇

「…え…っ……」
青年は、頭がこんがらがってしまった。
自分をある人が街中で待っていると言われて来てみれば樽の中にぶち込まれ、
何かやけに揺れるなと思ったら「ようやく頂上!」と聞こえて山に連れてこられたと知って、
ごそごそ音がするなと思ったら既に全く動かない。

そして寒さで凍えている内にいかにもこの世の物とは思えない場所で狐が二足歩行で。

「……本当、ですか?」
何にせよ青年は今は目の前を信じることしか出来ない。
それがどんなに馬鹿げている物であっても。
「……信じられないだろうが、本当の話だ。」
上半身に何も身に付けていないから、呼吸によって胸が上下しているのが良く解る。
背後に見える二本の尻尾が、ゆらゆらと揺れている。

どうやら本当にこの生き物は生きているようだ。
「更に信じられない話だろうが」
そこで一呼吸置き、「お前は供物として捧げられた。」
「……供物?」「ああ、供物だ。酒やら干し肉やらが主流というのに、最近の人間はどうにも考えが奇抜で……」

青年は供物である。

供物は食べ物が主流のようだ。

供物は食べ物。

青年は供物。青年は、

食べ物。

「さてさて、先ずは…」
「……ひぃぃ…っ」
浮き上がった身体が二足狐に引き寄せられ、そっと抱き上げられる。
体毛がが顔の側面に当たったりしてこそばゆいが、
頭の中が沸き起こってきた考えで一杯になって、それに反応することは出来なかった。
「喰わ…れぇ……ぇ…ぇ」
がくがくと恐れ、それが震えとなって現れる。
しかし青年はもう逃げられないのだ。恐怖を捨てることなどしか出来ないのだ。
「……身を清めよ。」「…え。」「…さ、行くぞ。」「…え?」
二足狐は有無を言わさず、青年を抱えたまま歩き出した。

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あきゅろす。
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