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短篇
リターン魔-1
再来魔王軍と名乗ったその世にも悍ましき集団が、突如として世界征服するべく各地への侵攻を始めて、何年が経過したのだろうか。
一般的に狼人や兎人等といった毛皮だけに身を包まれるべきである獣人達でも、その頭に角を生やしていたり翼を背中から生やしているのが魔王軍が率いる魔人と名乗った面々の特徴だった。
その翼で堂々と空を飛ぶ。強力な魔法を使うばかりではなく、その口から炎を吐き出して村を焼いたりもする。驚愕を通り越して忽ちに恐怖される存在と化した。

「このままでは住民が殺されてしまう」そんな憂いの果てに泣く泣く丸ごと魔人の捕虜となった村が存在した。
「決して誇りを失ったりはしない」そんな思いを抱きながら何人もの兵士が死んでいった。
「我々は魔王様の味方です」と突如として国の代表が魔王軍の一員に周り、そのまま敵対国との戦争に魔人を混ぜ込む国も存在していた。当然ながら戦乱は全世界へと周り巡り、様々な変化が及び続ける。

「最近になってまーた……魔王がどうとかって名乗る人が目立っているよね?」
「全くもってそうですね……二年前から動いても問題無かったのではないのですか?」

一方その頃、魔界では。今現在の世界で蔓延っている魔王の本拠地でも何でも無い、魔界に存在している魔王の下には、一人の悪魔が呼び付けられていた。
全身が異常なまでに太ましいという訳でも何でもない、真っ白い毛並みが背中側を覆い、腹側は灰色から腹はどす黒い歪なグラデーションを備えた狼人型の、魔界に存在する魔人である。
程よく引き締まっている肉に尻尾はまるで真っ白、そんな肉体に裾が広いチュニックのみを履いた姿で魔王と相対している。
左右の目にそれぞれ瞳孔が二つ存在している奇妙な視線でじっと魔王と差し出された肉菓子の残りを捉えながら、他の魔人達に比べると極めて頭が良さげな言葉を紡いでいる。

「そうだっけ。まあ……これで『前』みたいな事が起こっちゃうと困る……すっごく困るというか、流石に申し訳ない気持ちが魔王として出て来ちゃうんだよ。二度目だもん」
「迂闊にその様な設定を積み重ねてしまって後でとんでもない事になろうとは思わないのですか?」
「魔界だから大丈夫理論で押し通すから大丈夫だよ……そんな君の冷静さと割り切りに免じて……魔王軍と世界を見届けて来て欲しいんだ」

申し訳なさそうに肩をすくめる魔王。ノリと勢いで世界をちょっとばかり地獄に大変な事にさせてしまって、その尻拭いを悪魔達が勇者となのって行なう事になったのも今ではすっかり逸話である。
勇者役であった彼等も悪魔としてはぴんぴんしている。常にビンビンであったりもするが、向こうの世界では時折話されたり、正体がバレたり、捕まりかけたりするのだから世界の奇妙さは何とも恐ろしいものだったりする。

そして一応は諸々の過去の話であるという事として割り切ってしまうが、魔界と魔王軍に蹂躙されようとしている世界の行き来には結構厄介な手順があり、完全な往復は難しい。
断っても構わないが二度と戻って来れなくなるかもしれないリスクを踏まえてまで、魔王直々の頼みを受け入れてくれるか、と。実に緩いいつもの調子でありながら、魔王はそんな言葉を紡いでくれている。

「勿論構いませんが……相応の報酬はちゃんとくれるのでしょうね?」
「あー……あー、うん。戻って来れたら払うしちゃんと援助もするから頑張ってね」
「……ええ、勿論」

思ったよりも緻密には決まっていないその場その場の頼みであっても、狼人型の悪魔は全て理解した上で容認する。
魔王への道に通じるかも知れないといった上昇志向や、魔界には存在しない諸々の出来事に対する好奇心。何よりも頭の中に混ざっていたのは、気晴らしになるかな、と言った暇潰し。

向こうの世界の住民の様に、革製の防具を下着の上から身に着ける。胸当てを備えると、ちょうど以前の白狼人の勇者の様に露出した毛並みは白色ばかりになっている。
準備が済めば行って来ますと礼儀正しく一言残し。暫く歩いては間もなく戦場と化すらしい小さな村へと辿り着き。

「はひっ、きゅおぉぉぉぉんっっ!?ちんぽ…チンポぉぉっ……!」

数日後には破壊された装備から局所と尻孔を剥き出しにして、壁尻扱いで魔王軍と獣人達から掘られ続ける日々を過ごしていた。

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