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悪戯後のファイティング
もふもふした感触はやはり心地良い。人間には無い、だから嫌いじゃない。

「…もしかしたらヤクトさんも、そっち系の」
「さあ、どうだか……ロッシュもそろそろ収まっただろ…」

見ると未だに後ろ向きで前屈みになっている。微妙に耳が前に垂れているのが少し物悲しい。
と、その背後にヤクトさんが足音を殺して忍び寄り

「…ほいっ」
「わひゃぅぁっ!?」

ズボンの後ろから出されていた真ん丸の尻尾をつまむと、面白い声を上げて飛び退いた。
「……ヤクトぉ、いきなり何するんだっ!」
「おぉっと、何か触りたくなったんだ…うおっ、」
怒りを露にしながらロッシュが自身の魔力で精製した銃弾を連射。
ヤクトさんはそれを余裕そうにひらひらと避ける。
尻尾はだいたいの獣人の『感情の伝達手段』で『弱点』で『敏感な部分』である。
獣人の先生等からは「あまり触るな」と教えられているが、そう言われると矢鱈触りたくなる。
不意に尻尾を掴んだりしたら相当なリアクションを見せてくれる。
それを面白がっていつも尻尾を掴みたがる人がいて、自分はそれをよく傍らで見ていた。

「このー!僕より便利屋歴短いくせにー!」
「一月ちょいの話だろ?ほぼ同期だって…」

一度ラーツが尻尾を掴まれた時は、見事に上に飛んで天井に頭をぶつけた。
その後、その人間は顔面の面積がおよそ…黒焦げになって……詳しいことは忘れてしまった。

「当たらない当たらない。避けられなけりゃ棍棒なんざ使わんよ。」
「むぅぅっ…!撃ち尽くしてやるっ!」

そうだ、手紙の返信でも送ってみようかな。きっと曲がりなりにも喜んでくれるだろう。
いっその事10枚ぐらい書いてみようか…書いてみても届くだろうか。

「久々にやってやるか…全く、だからチビなんだ……」
「チビじゃないっ!今じゃ一番背が低くなんか無い!」
「分かった分かった、もう寝ろ。よいこはねるじかんだ。」
「子供扱いするな!」

……今日はもう遅いな、一旦眠ってから明日考えよう。
明日起きてから書く気が残っているのかが問題だけれど。
音が激しくなっている鍛練場を、目を軽く擦りながら抜け出した。



第四巻、終。

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