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起床後
「…………」
目が覚めた時には、何故か自分の、自分が割り当てられた便利屋内の部屋にいた。
身体を起こして時計を見てみればもうすっかり夕飯時。
昼寝をし過ぎたのではないだろうし、第一昼寝をした記憶が無い。

「………」
全てが夢という事で済ませられはしないだろう。
現にあの時の感触もいやに生々しく覚えているし、服の匂いを嗅いでも爽やかな洗い立ての匂いがする。

恐らく自分は最後に意識を失った、もとい飛んでしまった。
それに気付いたフーガさんが色々と事後処理をしてくれたに違いない。
そう解釈するのが妥当。その他の異論は一切受け付けない。あの鼠人が手伝ったのでは……あり得るかもしれない。

だいぶ眠ってしまったようで、中空となった胃袋が空気を押し出し腹から気の抜けた音を放つ。

「………ああ、今起きたのかな?」
「……こんにちは、若しくは今晩は」

いつもの極限まで面積を減らした服装で、赤い鳥人が湯気の立つ椀と水差しとカップの乗ったお盆を持って部屋に入ってきた。

「もうみんな食べちゃって、出来立て作って持ってきたよ……正直に言って、どうだったかな?」
「ありがとうございます……どう見えました?」
お盆を自分の横に置かれ、箸を渡された。
椀の中には病人お断りとでも言うような香りのきついスタミナ料理。
「んー…凄い感じてたように見えたけど」
「今からご飯食べるんでそういう話はちょっと」

箸で大きめに切られた具材を摘まみ、
口に運ぶと香辛料の風味が抜群に素材の味を引き立てていて、尚且歯切れの良い食感がまた…
相も変わらず絶品だ。この味ならば少しばかり、いややはり今日の事は帳消しには出来ない。
食事に集中していますという雰囲気を漂わせるために
ひたすら無心で口に運び、咀嚼し、飲み下し、たまに水を飲み……

「じゃあ、適当な話しでもするかな……」
「………」
口に詰め込みすぎて、話す事が出来ない。多分頬が膨らんでいる。
早々に流し込んでしまおうと、水入りのカップを口元に付け、飲もうと顎を上げて

「昼にサイ君の吸い込んだ媚薬の効果大して無かった事とか」
「…………」

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あきゅろす。
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