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入店後のスプレッド
フーガさんが扉を開けた途端に、まばゆいばかりの光が目に飛び込んでこず、
落ち着いた木製の棚や濃い緑色をした絨毯が見える。
扉に取り付けられていたベルが、がらんがらんと音を立てた。

「いらっしゃいませー。」
店番をしていたらしい鼠人が特徴的な出っ歯を見せながら笑って挨拶をしてくる。
「…外見に比べて落ち着い……」
ていなかった。まず棚に並べられている物。

……どうみても男のアレを模した形状を前提として先端が二又だったり棘々が生えていたり。
大きさも自分の腰辺りまでの長さの物から鉛筆のようなもの。その下には『尿道攻め用』と書かれている。
他にも『緊縛用有刺鉄線』やら、『搾取のための吸盤と吸引機セット』……ここは危ない事が良く解る。

「えーと、『―〜──』は仕入れていますか?」
「おや、毎度どうも、ではこちらに…そちらの人間は?」
「連れですよ…あ、そこで待ってて。こっちは少し危ないから」

毎回この店を利用しているから、店員にも顔を覚えられたみたいだ。
突っ立っている訳にもいかないので、近くにあったソファーに値札やらがついてないのを確かめ、腰掛ける。
やや古いものなのか、スプリングが軋む。

「…これ…新……感……50倍…」
「…こ……三角………?」
「…鬼……突っ込……けない…」

店員とフーガさんの会話が断片的に聞こえてくる。
恐らく誰でも引くようなえげつない代物があっちに沢山あるのだろう。

座っているだけだと暇なので、棚の商品を順々に見る事にする。



見れば見る程店員の趣味の悪さが露呈してきた。
『絶対昇天!分速600回転掘削君』の下に『店長オススメ!』
『半永久快楽?15mイボイボビーズ』の下には『気持ち良いけど命の危険アリ!』

……どんな顔をすればいいのか分からない。
二人は向こうで世間話に入っている。
やっぱり、行かなかった方が良かったかな。素直な気持ちでそう思った。

──がらんがらん。
ベルの音と共に、一人の犬系、或いは狼獣人が入ってきた。
…こちらを見て、笑った?
すると自分が座っているソファーに近付きながら、上着のポケットから何かを取り出して、

「……っ!?」
「…へへへっ♪」

いきなり自分の顔に霧吹きで何かを吹き付けてきた。
果実のような、甘い香りの液体を。

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