到着、奇人観覧、絶望 仲間は彼の色々と奇妙な点を補える程度にはまともな人員が揃っている。自分の所ならばエンフィさんが恐らくは該当する人物だと勝手に決め付けて居て、だからこそ心の中で勝手に安心していた。トキザの周りも同じ様な風だと。 そういえば此処にはハスケイヴとシゼルニーも入って居た訳で、そうなると要求されるまともな人は大凡三倍強ぐらいだろうか。エンフィさんでも無理が有る状態、自分が今まで関わって来た人が何れだけ集まっても無理な数値になってしまった。 通された仮宿となるらしい部屋はかなり上等な物で有り、数階有る内の一階層が丸々使っても良い事になって居る、らしい。ここまでの事が出来る依頼主は何れだけの不安を抱えているのか。 「……あっ、お疲れ様です…」 「ただいまイファ。ちょっとたいちょーに顔を見せて来るから…」 「…………」 恐らくトキザの仲間と擦れ違った。どんな種族かどうかは微塵も分かりはしなくて。と言うより全身を覆い尽くして居る防護服にガスマスク、意図的に全身を隠して居る様にも見えて。期待が減り、その代わり不安が増え始める。 「…あぁ、大丈夫だよサイ。さっきの人は見た目と性格合わせてトータル的には良い人だから」 「……言葉にあの人以外の相手が未だ居る様なのが」 「トウゼンデスヨ。支部でマカサレテ少数精鋭デスヨ。勿論僕達含まれマスヨ」 「……もしかしたら、常識人ってもう「ハロー!」「ハロー!」 再び似た様な防護服にガスマスクを被った相手と擦れ違う。軽快な挨拶をしながらも体格と声色の違いから先程の相手では無いと分かって。納得という言葉は頭の中に残らないまま皆が来たら如何なるのか不安しか浮かばなくなっている。 トキザが此方を見ながらにこやかな笑顔を浮かべて居るが、自分は未だ良いのだ。仲間達と馴染めるかどうかが果たして。特に一部の人間が、強いて言うなら自分たち廼所長が一番の問題である。打ち解けられるだろうか。 一つの部屋の前に辿り着いて、扉を軽快に叩き、少しも待たずにトキザは扉を開けてしまった。中には当然以前の親睦会で見覚えが有るあの赤毛の牛人が、前と同じ様な格好でベッドの上で寝ていた。全裸で。慌てて身体に被せたが毛布の薄さから微妙に影が見える。 「おい…ノックして確認得てから入ってくれって何回言えば良いんだ?」 「心配要りませんよ、だって開けただけで入っては居ませんからね!ほらこの通り!」 「…訂正だ、確認してから開け…お前…友達だからっていきなり連れ込むのは早過ぎなんじゃねぇか…うぉぉっ!?」 「……………」 「はーい!ハスケイヴ=ロウンスナンバー、ベランダから威風堂々と到着しましたっ!」 この際打ち解けるかが問題じゃない。噛み合うかどうか、なのだろう。 【第二十八巻 終】 [*バック] [戻る] |