観察、状況判断、乗車。 「貴方に何も見えない所が見える」 そうハノンは自分を真っ直ぐ見据えながら呟いた。彼女の医療技術は確かであり、今の様に地肌を触れ合わせて居るだけでも魔力の乱れで体調の変化が読めるとの事だ。魔法が使えなくても、脈拍に呼吸、その他様々なやり方で見る事は十分だろう。 とは言え、自分の中のこれは決して他人には読ませてはいけないものだ。未だに読解は出来て居ない、其処まで辿り着かせては行けない、乱暴に両手を振り払う。視線は合わせたまま。僅かの動揺も見られないのはよく有る事だ。 「……ランに随分似て来た」 「褒め言葉として受け止めて良いのかな」 「最後までその通りだったら、私は絶対に貴方を赦さない」 「…………」 それは如何だろうか、はっきりとは言えないままに自分は彼女と別れてしまった。こういう予感に限って嫌な方向に的中する。と不必要な程に不安を抱けば大体は平気だと聞いた事が有る。 適宜に油断せずに対処法を用意していれば危険に対応出来る、結局はそういう結論で纏められるのだろう。自分の道具一式はナイシャンさんが持って居た為に素直に持ち直し、残る意味も無かったので即座に戻る事に。 長らく眠ってしまったので体力については良好。先ずは今日の依頼に同行出来るか如何かが問題。次には自分の行動が咎められたりしないか問題である。一日掛かるかもしれない事を誰にも伝えられてない。 自分が度々居なくなってしまうのがよくある事だと慣れてしまうのもそれはそれで非常な問題だと思うが。出来るのならば急いで帰った方が良さそうだ。敷地外に出た途端、首に巻き付けたマフラーを起動し空を飛ぶ。なんて事が出来たら良いのだが目立ち過ぎるのも良くないから。 「…………」 何時もの様に列車に乗っての帰宅、自分の隣に乗っている相手が極めて異質に見える。何処かで見た様な服装に何処かで見た様な大層な宝石を首から提げて居る。加えてその犬人は慣れた様子で揺れる列車に乗って居る。 以前自分が戦った事のある相手と同じ様な服装、それも悪魔達とハノンと便利屋の皆相手に引けを取らなかった彼等と同じ筈だ。こんな所で出会ってしまうとは嫌な予感の的中かそれとも。予想よりも世界はずっと。 町長も伝えた、開示する時は近いと、世界中に拡散して居る筈の皆に向かってこの言葉を。先にあるのは行動を起こす事なのだろう。その時自分達は、そして父さん他がやるべきなのは。 「…………」 明確には決める事が出来ない。全てを無くすのも惜しい。副町長と伴って。ナイシャンさんが聞いて居るとしたら所長にも話が回るものだと合わせて考えるべきだろう。様々な事で便利屋に戻った時一悶着有りそうだ。 [*バック][ネクスト#] [戻る] |