[携帯モード] [URL送信]
友情、気分下降、寝室。
今現在も自分は気を失っているに違い無い。延々と夢を見続ける中の一幕に過ぎない可能性が残っている。そうでなかったら、何でラーツが自分なんかを背負って何処かに運んでいるのか説明が付かない。
感覚はまだ鈍いが、露骨に起きた途端に自分に察知されない為全力で走り出す様な気がする。夢か現か正確な判断は掴めないが大人しくして居るのが懸命で。暫く歩いた後に、部屋に辿り着いた。
ベッドが二つ、机が二つ、寝室なのだろう。その割には机が使われて居た形跡が全く見えないのは気になるがそれより先にベッドに寝かせられる。ラーツの匂いだ。加えて彼も縁に腰を下ろして。

「……で、実際の所君はどうなの?」
「…………」

思いが一切籠って居ない様な、友達同士が行う何気ない口調だった。もう自分の意識が回復して居る事も知ったその上で。此方を見据える瞳は鋭く多分僅かな嘘も見逃さない。
薄目を元に戻して、視線を反らさず合わせながらどうするべきか考える。どんな答えでも嘘を言わなければ納得してくれる。しかし助けてくれた礼に少しぐらいなら。
確かに、町長から送られたあの言葉通りだ。何も語らないまま押し通せるのはそろそろ難しくなっていて、後には不可能になる。それを読んだ上であのメッセージカードだ。誰にも送られて来て居るのだろう。

「…もう直ぐしたら、多分解ると思うから……」
「俺だけが?」
「…きっと、世界中に」
「……それだけ大きい事なんだ。なのに俺みたいな友達にも今までもさっきも詳しくは話さないって、サイ君は酷い奴だねぇ」

軽く自分の頬を引っ張りながら、やはり何時もの様にからかった口調で呟いて居る。先程の優しさが無ければ何時もの調子に戻って来て居るのだろうか。ベッドはそれなりに乱雑に整えられて居て、ラーツの手先の毛並みは綺麗だった。

「…正直、君が予想して居るよりもずーっと……俺はがっかりしてるよ…それとも、それだけ凄い事を一人で背負ってたのなら…俺が直々に褒めてあげるけど…どうなのさ。それだけ隠さなきゃならないぐらいに凄い事なの?」
「…詳しくは言えないけど、そうだよ」
「よしよし」

頬を引っ張られていた手で頭を撫でられる。悪い気持ちでは無いがラーツにされるとなると実に奇妙な感覚が頭の中に渦巻いて素直に喜べない様な。
寝た状態で頭を撫でられ?心を読まれようとしたのを無理矢理振り払ったからか眠気が急速に湧き上がって来てしまった。眠ってしまったとして起きたら外に放り出されてもおかしくない。

「…暫くナイシャン達と話を付けて来るから、その時までは部屋から出なくて良いから」
「……ラーツ、熱でも有るの…?」
「……何かよくわからないアレで疲れてる友達なら、流石の俺も気遣うさ」

言葉を吐き捨てた後、本当にラーツは布団を自分に被せて去って行ってしまった。尻尾が嬉しそうに揺れていたのは自分の幻覚だと思うが。

[*バック][ネクスト#]

15/20ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!