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奪還、真実開示、二人
立ち上がろうとするが未だに足から下がゲル状になってしまったみたいである。そもそも椅子の肘掛けに乗せて居る手も上手く力が入らない。身体が元に戻るまで大人しく傍観するのが良いだろう。何時になるのか解らないが。
殴り飛ばした音まで聞こえた、聴力も視力も元通りに戻っているらしい。動かないのは身体だけで、一撃でジェロントさんだかは床に倒れナイシャンさんは膝を着いた。
珍しい事にラーツが本気気味に怒って居る。それも恐らくは自分の事で。鉄の匂いが漂って来て、確認してみればラーツの拳から出血して居る。爪が食い込んで居るのだろう。

「…サイ君に何をやってたのさ」
「げほっ…ラーツ君っ、これは…言い訳にしか聞こえないだろうが、私だって心苦しかった」

嘘は言ってない。確かに彼の顔は苦しそうに見えた。背後でジェロントさんを止めようとしたいのを無理矢理堪えて居た様に。結局は自分が拒む事が出来、その時不思議とほっと安心していた様で。
問題はそう言った事が何であれ怒って居るラーツには無意味な事で有る。次に打ち込まれたのは爪先蹴りが床に。どれだけ怒ってるのかを示しているのだろう。

「…ナイシャン、俺は頭が悪いって自分で知ってるよ。だから手短に分かり易く説明して貰わないと聞かないまま最悪殺す」
「……そうだね…君は口が堅い様に思っている…ヴィアナ君達の部隊が十万人とは知っているかい?しかしながら、その八割以上が国内には居ない…世界中に散らばって逐一情報を送ってるんだ…」
「…………」

自分の事は意識が無いと思われて居るのか気にせず話している。このまま暫く曖昧な振りをする事にした。ラーツは気付いて居る様な視線を向けたが。

「へぇ…通りでやたらストリータなんたらさんが来って話が早々届いて包囲も完成してた訳だね」
「そういう訳でさりげなく世界中の情報が飛び込んで来て居る訳だが…前々からある事が気掛かりだったんだ…世界中の最近出て来た偉人の数割、とある共通点が存在する事が分かったんだ」
「あぁうん。それで?そろそろ纏めないと頭が千切れる」
「…分かり易く言えば、技術面、工場で使う機械やら新しい繊維…そういった物を発明した者の半分程度が『極めて無口で冷静で感情が希薄』、それだけじゃない。『大人も子供並みに手が小さく』そして、『現住所とは違う別の場所から来た』と…」
「…あぁ、サイ君も、ハノンも含まれてるんだ…それでこんな事やっちゃったんだ、ふぅん…よいしょっと」

軽く聞き流してから、自分の身体が簡単に持ち上げられた。ラーツが珍しく自分をまともに背負ってしまっている。身体にまだ力が入らない、有難いのだが何処かおかしい様な。

「ナイシャンは言ったね。『俺に任せる』って。暫く二人にさせてよ、何とかやってみるから」
「…あぁ、是非ともおねがぐえぇぇぇ」

まるで誰かの太腿を爪先で踏み付けた様な感触が下からした。

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あきゅろす。
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