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精神、読解抵抗、友人。
全身が緩くなって半固体状になってしまった様だ。ひたすらに頭の奥に聞こえる質問に自分は答えなければならない。そう確信している。が、何かおかしい予感がするのは何故だろうか。
さっき何か感じた自分に対する何かしらを掛けられた事が関係して居るのだろうか。ここまで蕩けてしまったのだ、自分はこれで基本形で誰かの干渉等受けていないに決まっている。
『貴方の出身地について聞かせて下さい』それは言ってはいけないと決められて居る。しかし答えなければ、だけど自分達より彼の方がずっと正しくて、答えなければ、いや、

「…言え…ません」
「…………」

残念そうな表情を、目の前で確かに浮かべている。感心した様にも見えたが、途端に罪悪感が自分の中を駆け抜け始める。彼の質問に答えるべきであったのに自分は背いてしまった。彼。あんなに優しく自分の中に響く声の何処が男なのだろう。
『隠さずに言っても良いのですよ、赦されるのですから』ほらこの通りジェロントと言う名だった犬人はしっかりと答えて居るではないか。ジェロントとは誰だろうか。小さな引っ掛かりの割に重く口を噤んでしまう。答えなければならないのに。何故。
確かにナイシャンさんといきなり会って来た相手だが信じない必要が何処にも無く自分は答えなければならない。その犬人が何かやって居る様だが自分は答えなければ。頭を押さえ付けられて居るが答えないと駄目なのだ。どうして答えるのか。答えないと駄目なのは何故か。
『…答えなければなりませんよ?』その通りだとしっかりと理解は出来て居る。もしもこのまま答えなかったら何が有るのか軽く考えるだけでも全身が震えてしまう。その反面答えたなら自分にとってとても素晴らしい事が待って居る。確実に。

「…ぁ………」

ぼやけた視界がやっと戻って来たが自分の目の前にはジェロントさんの間近に迫った、額同士を合わせて居る様子しか見えやしない。頭の中に残る声に答えなければならないのに。さもなければ自分は。
ジェロントさんは果たして何をして居るのか。熱を調べている訳でも無いと思うのだが今は彼よりも答えが大事なのに気掛かりで仕方無い。放って居たらいけない様な気がする、ぼやけた頭も段々戻って来た。そろそろ答えるべきだ。
単に自分が知っている限りで良いのだから。適当に隠すのは駄目で全てを明かす必要が有る訳でも無いのはジェロントさんが声の主だとしたらだ。何をされたのか、頭の中に、答えなければ、頭に何かを差し込まれたのだ。
回答を言葉に、こういう魔法なのだが蕩けて答えなければならない、自分から聞き出そうとして居るのだがそんな事より答える、第一に明かさなければ、抵抗をしないと駄目だと言う事でも無いから答えて、意思に関わるなら意思で返さなければ。
『答えなさい』嫌だ。もっと強く示す。答えなければならないので明確に心で拒絶する。先に答えなければ。『さぁ』誘われるままに嫌だ。絶対に答えてはならない。『答えなければ』怖い。でも断る。『答えたならば』天国が迫って居る。嬉しい気持ちが既に有るがそれでも自分は答えなければ、

「嫌…で………」
「くぅぅっ!?」

間近での叫び声、頭から引っこ抜かれた何かしらに急に覚めて行く意識。全身には汗が浮かび目元には涙に口元には涎。何をされて居たのか容易に理解出来た。難しかったが跳ね除けられたのだろうか。
分厚い扉が開いて、其処にはラーツが居た。ラーツが跳んだ。ラーツがナイシャンさんを殴った。ラーツが跳んでジェロントさんを殴った。未だに少し頭がこんがらがっている。無理矢理掻き回された頭を自分で掻き回して直した様な。
ともあれ、今はこれで一段落着いたのか。もう何も答える必要は無い。それに、明かされる日はきっと近いのだろう。

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あきゅろす。
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