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虫籠、強制尋問、回答
「…どうしてですかね」
「大事な事を話して居ないからだってさ。君の出身地だとかその辺りを」

自分とストリータ・ヘキサルとの関係性、主に協力者だとかその辺りの可能性は消え去ったらしい。飛び込んで来た話には町長が殺人事件を独自のやり方で調べ直した結果とにかく真実が明らかになったとの事である。
あの戦闘機の搭乗者が誰に依頼されたかと町長が調べ上げた真犯人の名前が一致、国ぐるみでの黒い陰謀やら表に出たが、とにかく彼が無実なら自分もまた同じく。
しかし、何故自分は奇妙な白黒の外見をした牢屋に閉じ込められて居るのだろうか。やたらと頑丈な扉に分厚い壁、各種道具も一部を除き没収されている。目の前にはナイシャンさんが辛そうに自分を見ていた。ここまでやるのは、ハノンが口を割らないからだろう。彼女にも町長から手紙が来て居る筈だ。

「…正直に言うが、君は結構な厄介者だと憲兵の中で密かに言われててね。セグよりかはましだと聞いて居るが、私はどう返せば良いか解らなかったよ…」
「……それで、僕は何を言えば良いんですか…」
「君の出身地についての話を」
「…………」

それが問題なんだ、とナイシャンさんは残念そうに語る。ハノンも同じく全く話してくれない、それも君の様に無言と否定ばかり通してまるで誰かに告げ口された様だ、その裏に何が有るのか分からないと続けて。有るのは単に街が一つだけなので言う必要も無い。
と、彼の背後から一人犬人がやって来た。黒を基調とした尻尾がやけに短く、両耳が鋭く尖って立ち上がっている同じ様な体格をした男だ。微笑みを浮かべては居るが何処か怪しい雰囲気を感じる。

「…可愛い子ですね…正直、私も心苦しいのですが」
「…私だって心苦しいさ…それでも…やるしか無いんだ…やってくれジェロント君」
「……一体何をするつもりなんです」

頭の中に何かが突き刺さった様な、しかし痛みは微塵も感じずに深々と何かが奥に向かって突き進んで居る。座らされたまま身体の自由も少し効かない満足に動かせなくなって、
『最初に、貴方は誰ですか?』頭の中に直接声が聞こえて来る。それも答えなければならない様な義務感を持って居る様な、この声の主には自分はどんな事でも答えなければいけない。様な。いや。

「……サイ…スロード…です……『それは本名ですか?』…はい…親から名付けられた名前で…」

答えてしまう。極めて感覚が鈍くなっているが自分の口からはっきりと真実が今語られる。これはそういう魔法だ。自分に掛けられてしまった。

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