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交流、郵便来訪、類似。
「……で、こうして見ると本当に便利屋はクズだってつくづく思うねぇ」
「僕も真面目にこなした上での結果なんだけどな…手錠を外してくれると有難いんだけど」
「やだ。サイ君関節だけは柔らかいしそれで十分でしょ」

氷が融けた時には全て終わっていた。そして憲兵では無かった自分だけがあっけなく補導された。連れ込まれた取調室に居たのはラーツなのだが、これはどう取れば良いのだろうか。
手錠を後ろ手に回された状態で座らされて居る上目の前に座って居るのはラーツだ、少しの隙も与えられていない。ストリータ・ヘキサルの事は説明するにも仕方無いから納得してくれるだろうか。
手錠の頑丈さと分厚さからどれだけ憲兵側が自分を重く見て居るのか分かる。直接的な関係も有る上に母さんや父さん含め他の事も考えると確かに被害は重大だろう。

「悪いけど『友情を不意にして申し訳無いとは思うけど今回はきっちりと絞り出してくれ!』ってナイシャンから言われてるからさ。あー心が痛い心が痛い」
「……どの辺りを絞り出すかで僕も力一杯抵抗するけど」
「んー、そうだね、特に聞き出して欲しいって来たのは君とハノンのお兄さんとの関係が最重要。関与してないかだってさ。それから…出身地?サイ君孤児院育ちで絵描きに引き取られたんじゃなかったっけ」
「知り合いだった、それだけ」
「うん、それで後の方は?」
「…………」

ラーツの言葉に嫌がっている様子が微塵も感じられない。彼自身も興味を抱いていた、何となく嘘か薄い話だと読み切っていたのか、それでも話す気は無い。ストリータ・ヘキサルにこの重くて自分の手首が既に痛み始めている手錠が掛けられてないと思うと。
直ぐ様自分の様子から口を割る気は無いと判断したのか、ラーツが立ち上がり自分の手錠をそのまま上に持ち上げついて来た両腕はそれにならって捻り上げられて痛みが走る。
と思ったら直ぐに両手が自由になった。手首の様子を見ると赤く跡が残って居る。もう少ししたら紫色が混ざった結果になったのかもしれない。

「……何でこんな時に限って、鍵もきっちり掛けた部屋に君宛ての手紙が届くかな…うわっ、俺の知らない便利屋からだ…」
「……本当にそうだよね…何で届くのかな」

手渡された封筒、と言うより二つ折りのメッセージカードには「grapy one's所長」との、つまりは町長からの言葉が。元は嫌な予感しかしないが文面だけは美しい、開けば<世界><隠蔽><不可><接近>、確かにその通りだ。

「…何それ。本当に便利屋ってわっかんない」「…大変だ…いやそれ程でも無いけど!さっきストリータ・ヘキサルの無実が確定した!」
「……具体的にはどうやって確定したんですか…」「詳しくは分からない!何故か『便利屋が解決した』とだけしか…とにかく国が認めたんだ…良かった…サイ君が無実で…」

白狼人にしてラーツの上司、ナイシャンさんは涙目だった。仲間の友達に対してそこまでの涙を流せる、流石所長の親友だけある。

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