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直撃、容態確認、待人。
あまりに馬鹿げた結果だった。しかしながら、ラーツ自身に怪我のリスクを背負わせる程にさり気無く彼は追い詰めていた、と考えて良いとは思う。彼が一撃で伸びてしまったのは確かだが。
一人が床に倒れ伏して、一人が少しの違和感を漂わせながらもしっかりと立って居る。レンカさんがぽかんと口を開いて居るが仕方無い。自分の予想通りに事は進んだ。

「…えーと、取り敢えずこれでお開き…で良いのかな?」
「……ちょちょちょ、待ちなさいよ!今のは流石におかしいわよ!まさか隊長じゃあるまいし!」

慌てながらレンカさんは言葉を放つ。彼と自分自身の創り上げた技術が倒れて居るのが認められず、その方法の馬鹿さ加減も信じられない、そんな表情。実際自分も呆れてしまった。
何をどうしたら靴を投げ付けて気を取られた所に素足での爪先蹴りを胸元に打ち込みたくなるのだろうか。金属の塊である強化装甲服を纏った彼に対して。その上でダウンを奪ったのも信じ難い結果だ。
彼が跳ね起きる。辺りを見回して状況を理解したのか残念そうに肩を落とし、頭に被っていた防具を外す。装甲服の為に一回り大きく見える身体に、不釣り合いな彼の顔が露わになった。自分並みに小柄な人間の自分程度の大きさをした人間だ。

「っけほ…はぁ…まさかあそこであんな風な蹴りが来るなんてネ…もう少し装甲分厚くても良くない?」
「かなり上から目線の話になると思うけど、良いと思うよ…それに、シューゴ君がやりたい様にやったら無敵じゃないかな…」

実際シューゴを見下ろしながら的確に評価している。装甲服を装備した上で武器と魔法を組み合わせるならば、確実に強くなるどころか間違いなく鎮圧出来る暴徒は殆ど居ないだろう。
倒されたものの殆ど無傷らしいシューゴは、ごくごく普通に歩いてレンカさんの元へ。自分が観察して居る限りは何の不具合も無さそうだったが、と思いきや自分とハイタッチを求めて来て。
ぱんっと自分の物と合わせられる装甲服の掌は生身と同じ様な柔らかさと何かと物が摘み易そうな微細な凹凸が感じられる。生身のものと同じ様に。

「……どうコレ?さっきのは完全に無視した上で素直な感想を聞かせて貰おうか!」
「……そうだね…このサイズであそこまで力が出せるのなら何一つ問題は無いかな……それに、ラーツに突き指させるなんて誇っても良いと思う」
「あー、やっぱりバレてたんだ」
「突き指!?折れてないって…もう何よ本っ当に!」

レンカさんが残念そうな声を漏らすが、加えてラーツの蹴りを受けてシューゴが無傷なのは同じく誇っても良い。全力で蹴り付けて一度倒れただけなのだから防御もお墨付き、申し分無い性能だろう。

「……………」
「……………」

そして、この部屋をそっとハノンが覗き込んで居る。レンカさんに呼び出されて目的が終わって直ぐには帰れそうに無いらしい。

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あきゅろす。
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