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立会、自身持参、決着。
「凄いですね」
「でしょう?」

自分の口から漏れた感想は、その程度に短くて簡潔で、如何とでも聞き手次第で取れる様な曖昧さを含むもの。どう頭の中で取って居るのか直接には分からない。が、曖昧なまま自分に同意してくれた。
休日、呼び出されたと思えば自分の友達二人が何も無い空間で戦い合おうとして居て。この時点で友達としてなら止めるべきなのだろう。お互い合意の上での立会いと聞くまでは。

「…ほっ」
「のわっと!」

一人は普通に動き易い格好に両手にはグローブ、太くてふさふさとした尻尾と耳が揺れては鋭い早さと勢いを備えた一撃を放っている。何時ものラーツで間違い無い。戦い始めて数分掛かっては居るが未だに体温の上昇は無い様だ。
そして上段蹴りのフェイントで膝を埋めようとするラーツの動きを見て辛うじて避けて居るのは一見誰だか分からない。ラーツより背は小さめだが、全身を覆い尽くす金属製の鎧を身に纏って居るから。
単に身に纏って居るのとは少し違う。しっかりと中の彼に合わせて造ってあるのだろう。全く違和感を感じさせずに彼の動きはあのラーツにしっかりと追い付きかけて居るではないか。あのラーツに。中の彼も鍛錬を詰み始めたらしいが、それでも見事だ。

「…へっへっへ!今までキミが屠り去った奴等の色んなプライドがついてるんだもんネ…」
「打ち砕くべきだとその日その時は思ってるんだよ…それに、調子に乗ってる君を、どうにか俺が正さないといけないみたいだ…」

自分から見てみるとどっちもどっちな気がしない訳でも無い。先程は敢えてラーツの攻撃を受けて居たのだが、今では出方を伺いながら後の先を狙う様になった。ラーツも同じく、最初はもっと緩かったが今はそれなりに気を入れた動きになっている。

「…さて、そろそろ決着が近付いて居る、というか一撃当たった方が負けるみたいな雰囲気ね…サイ君はどっちが勝つと思う?」
「……逆に聞きますけど、どう思っていますか?」

見る限りは二人に疲れは見られない。時間が経つにつれて動きが良くなって居るのも二人して変わらない。彼は慣れて来たのだろう、しかしラーツは。

「…ここまでやって、漸く…人間が獣人相手に肉弾戦で無傷で圧勝…技術を身体で…うふふふふふふ…」

自分が創り上げた物が必ず勝利を収めると彼女は、レンカさんは確信して居るらしい。自分とは考えが合わなかった。確かに彼は強い。デモンストレーションとして指で木の板を毟り取れる時点で気付ける。
加えて中の彼は小細工大好きな前科者だ。二人合わされば当然強さとしたたかさと愉快さも限りなく倍増するだろう。そして決して負けはしない。
だが、ラーツの馬鹿さ加減を棚に上げて居る限りは決して勝てない。負けなくて勝てない。自分が読んでいた結果は、相打ちだった。

[ネクスト#]

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あきゅろす。
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