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決定は託す、確定は消える
「…そんなの、馬鹿げてるよ。何で僕が生き残る事で父さんは完全に破壊しなければならないの?」
「これがお前にとって最も効率的な攻撃方法…だからだ…」

シゼルニーの声色には、僅かに動揺が見えていて、そう話をして居る間にも、二人の身体からは無数の粉末状の物が、破壊され尽くした身体の一部がトイレの床に落ち続けて居る。当然、ユグローフの身体の方が早々と崩れていく。
自らによって身体を壊す。息子に決定打を与える為に。理由と言えばそれが一番の方法だったから。身体を完全に破壊する事になったとしても。更にパーカーの袖から大きい欠片が落ちる。
身体そのものが崩壊するのはシゼルニーも変わらないが、四肢が何かしら崩れ落ちる事は無く、全体を残しながらユーグロフが壊れるのを眺めていて。それは完全に油断だった。
トキザが自分に差し出したのは見覚えの有るマフラーと装飾銃。そして一発の弾丸。まるでユグローフかシゼルニーの身体の色の様に鈍い黒掛かった灰色で、持った端から崩れて居る。恐らくは、自分達にシゼルニーの始末を託したのだろう。

「…………」
「…………」

意思には答えるべき、今現在完全にユーグロフの崩壊を眺めている彼は格好の的だ。もしも今現在自分達に背後を狙われても構わない自信を持って居るのも有るだろう。
ユーグロフがシゼルニーに伝えたかったのは、独りでは無く自分達が居るからこそ性根を叩き直せる事。自分達次の世代を信じ切っているからこそ、我が身を完全なる犠牲に出来る事。
静かに装飾銃の先端から無理矢理崩れ続ける銃弾を詰め込んだ。これで引き金を引けば、二発の弾丸が飛び出る筈だ。シゼルニーの頭に撃ち込めば。片手で銃を握り締め狙いを合わせる。

「……………」

やけに照準が合わせ易い、装飾が一部取り払われて居る上に自分の手のサイズに合わせて照準器は大きく、もしかしなくても自分に合わせた改造がなされて居た。
トキザの自分に向けている微笑みはその為だろう。お陰でもう一人の親友を狙い易くなった。感謝をしなければならない。更に決定打にするべく、後方に造られて居たフックを引く。やはり引き易い。
程良い重さは残っている様で、片手で取り扱っても一切ぶれる事は無い。本当に有難い限りだ。最初に撃つのはシゼルニーになったけれど。
引き金に手を掛ける。どの辺りを狙えば良いのかも検討が付いた。微塵も手が震えていないのは、やはり自分達はそういうものだったと、そうなってしまったと、単に遺伝かもしれないが撃つのには問題が無い。

「…シゼルニー…お前は…本当に……」
「…そろそろ、心も読める様になる。暫くの気休めだよ、時間稼ぎには良かった、父さんにしては頑張った…っ……!?」

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