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攻撃は崩れる、防御は壊れる
逃げる者達に反してひょっこりと入って来ていた者の姿が。ハスケイヴに抱えられ文字通り地に足が付かなくなっている自分の頭に手が置かれる感触。慣れた風に撫で回してくるがどうなのだろうか。

「…シゼルニー、公共物はなるべく壊しちゃダメって言ってなかった?」
「……だから何?軽く触っただけで勝手に壊れるから仕方無いんだよ…ねぇ、父さん?」
「え、あ、ユグローフさん!バツを付けてから人を辞めたユグローフさんじゃないか!」
「……そう…だな…」

トキザは相変わらずだ。トイレが半壊している状況も気にしては居ない。素直にユグローフとの再会をそれなりに楽しんでいるらしく。状況的にはかなり不釣り合いなのは間違いない。
声に僅かながら雑音が混じっているのが聞こえる。予想以上に聞いているらしい。やはり能力の差は高く、身体を変化させるシゼルニーの攻撃方法は千差万別で。
次にシゼルニーが変化したのは、尖った菱形に。しかも羽の類が一切無いのに空中に浮き上がっている。そのまま飛んだ。ユグローフの身体を突き抜けて自分達の元まで飛んで来た。

「おっとぉ!」
「っ」

トキザが手を前に翳すと、菱形は失速する。ゆっくりと此方に切っ先を近寄らせて居るがぶつかりはしない。その一方でユグローフの身体は明らかに破損、寧ろ貫通していた。
諦めたのか菱形から元の姿だった人型に戻る。服は着て居ない。全身鈍い灰色をした肌に覆われて居る。髪は全て一体化して頭に被る防具の様に変質して居る。柔らかいかどうかは解らないが股間には何も無い。筋肉と一体化しているのか、身体自体は人並みに細く。

「…君が魔法を使えないから、ギリギリセーフって所かな?」
「…今の僕には魔法なんか、必要無いよ…さっきのが君の限界?それなら、僕には越えられる…」

拳が握り締められるだけでも、シゼルニーの腕は数倍の太さに膨れ上がっていた。血管の類も浮き上がっている。こりゃ駄目かも、と小さくトキザが囁いて来た。
捕集器を起動させた所で、違和感に気が付いた。シゼルニーの身体から細かな粉が落ちているのが見える。ユーグロフがその背後でゆっくりと振り返った。その全身から同じ様な粉末が落ちている。が、破れていた服は元通りになっていて。

「な、え…何だこれ…何をしたんだよ…」
「…大体理解出来たと、私は言った。正確に言うのならば、お前の進化方法は私と同じ物を六割程度使っている…ならば、私が完全に破壊される方法なら…お前は約六割破壊される…訳だ…」

大量の粉は、その通り身体を構成されていた物質。皆の見ている前で、ユグローフの片腕が千切れて落ちた。

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