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定型は受ける、不定形は責める
一瞬。それだけでも、この親子喧嘩は誰にも手出し出来ないと理解。自分の身体はユグローフによって弾き飛ばされハスケイヴに抱え込まれる。そしてシゼルニーは全力で殴り掛かった。
刃物状だった腕はさながら巨大なハンマーの様に質量を増し、トイレの壁と共にユーグロフを身体ごと削り取ろうと。空間魔法で構成されて居たが、トイレ自体を丸ごと揺らす程の強力な衝撃。壁が吹き飛ぶ。
ユグローフは懐に飛び込み、タックルしながらも躱し、しかしシゼルニーは全くの無傷である。自分自身の身体を完全に人間の形状から変化させていた。二重の輪、その内側に無数の棘が生えたトラバサミの様に。

「え」

驚く皆を前にしても、構わずシゼルニーは実の父親に向かって喰らい付く。空洞だった為尚も前進、個室の壁を突き破りながら避けて居た。既に複数個存在していた個室は全て壁が一繋ぎになっている。
粉々になった瓦礫を払いながら、形を元に戻そうともしないシゼルニーと対峙する後姿。周りの警備隊は察したのか後退りして居る。ハスケイヴの身体は酒かマタタビが入っているのかやたらと熱い。

「……成る程。技術ってその場凌ぎの事だったんだね」
「…今の所私は無傷だ。時間こそ僅かだが。能力が明らかに上なお前と対峙しても」
「…へぇ…その言葉…後悔する暇も、絶対に与えないから…」

シゼルニーは形を変える。上半身だけ人型に、しかし腕は床に届きそうな程に長い物になり、歪に無数の突起が内側から湧き上がる様に生えていて。
予想は出来ていたのだが、その突起がそのままユグローフに飛ばされる。しかし両腕で顔を覆う様にして今度は守った。周りには飛んで来ず、全て最初からユーグロフ狙いだった様で。

「…破壊しようと思ったけど、僕の予想よりも硬いみたいだね…十分壊れるレベルだけど…」
「…私は、お前がどれだけの事が出来るか…粗方理解出来た。如何にお前に勝つか、も…思い付いた所」

トイレそのものが分断された。シゼルニーの手に、変化した鞭状の腕によって呆気無く。大それた様に見えた行動とは別に、シゼルニー自身は全く余裕とばかりの表情を見せている。実際、鞭状になっているのは指一本だけだ。
一周する様に払われた鞭状が、今度はユーグロフをターゲットとして放たれる。集中しても殆ど見えない程の早さを持って数十往復。ユーグロフの身体前面は切り刻まれた事になる。

「…やっぱり再生する。だけどさっきとは違って今度は斬れた…」
「……うわぁぁぁぁぁっ!?」

意図的にそうさせたのか。警備員達が一斉に逃げ出してしまい、トイレの中は五人だけになってしまって。それとも、三人と二体か。

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