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人外は向かう、半獣は喚く
父親と子供と感動の再会とならないのはやはり自分達の気質が関係して居るのだろうか。少なくともシゼルニーは実の父親に対して宜しくない感情しか抱いて居ないのは確かである。
トイレに人が来ない訳が無い。当然事に及んでは手を洗うか洗わないかして帰る相手達が存在する。しかし此方には全く気付いて居ない。と、ユーグロフが左手を掲げて戻した。ごく自然に。

「…これで、お前が仕掛けた錯覚は全て解けた。サイの仲間達も、既にサイが居なくなった事に気付いて居る…」
「…はっ、見付けられる前に殺して殺して記憶を全て消し飛ばしてしまえば大丈夫だよ。それに僕にはそれが出来る」

とても親子間で行われて居るとは思えない会話だ。自分が言うのも何だが。トイレに入って来た誰だかの犬人が、用を足しながら此方を注意深く見ている。
遠くから見るとパーカーを被った猫背二人と自分が話し合って居る様にも見えるだろう。あからさまに怪しく、少なくとも良い方向には考えたりは出来ない光景だ。
急に犬人が明らかに驚いた表情に変わった。何かと思えば、未だにシゼルニーの腕は刃物状になったままである。話し合いから異常事態に見えたのか、急いで手を洗ってから出て行ってしまった。

「…気付かれたな、やがて人が来る」
「…その前に済ませる。第一何でサイを守る?体格は恵まれてない僕達にも解らない部分が有る、まさか友達の息子だからって?そんな気持ち、もう無いんでしょ?」
「……ああ、全くもって同館だな。確かにその通り、私が今味わっている文化にも微塵も触れて居ない…しかし、曲がった子を正すのは親の役割だ。だから来た」
「…其処までだ!貴様等こんな時に限って何たるっちょまっおいっ!」
「…やぁやぁ!ハスケイヴ参上!どんな惨状どんと来いぃ、満足率もこれにて三乗ですよほぁ!」

警備員らしい相手達に加えて、ハスケイヴの楽しげな声。実際その顔は赤らんでいて尻尾は愉快そうに揺れている。呂律も少し回っていないが足取りはしっかりしていた。頼りになるかどうかは別だ。
親子間の話について、他人が無理に口を挟むのは良くない。そもそもこの二人に挟めるかどうか。煩わしいと感じたのかシゼルニーはより不機嫌な表情を見せている。

「…サイを守りながら僕を正す?不可能だよ、父さん」
「これだけ人が居る、お前の知り合い含めて…時間稼ぎには十分だ」
「僕の方がずっと優れている、時間稼ぎにもならないよ」
「確かにその通り、力量差は存在する…が、打ち破る術も持っている」「じゃあ、やってみなよ」
「…へいへーい!ココは僕の」

空間が盛大に、爆発した様に見えた。

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