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話手は持たせる、旧友は迫る
「…あぁ、急いで居るのならこれを…後でちゃんと返して下さい、それでは」
「…ってえぇぇぇっ!?それで終わりなのっ!?ちょっとぉ!」
「有難うございます、それでは」

話の分かる、と言うよりも此方の空気が伝わったのだろう。渡された封筒を収めて、ウサギ君の叫び声を無視してニッグさんの元へと向かう。時折自分の小ささに驚いたりして居るのか、視線をやや集めながら早足で。
ピアノの旋律が聞こえる。何時の間にか用意されて居たらしい。弾いている相手は顔が見えないというより、目深に被ったパーカーにより見えていない。知っている顔だとは思うが今は良い。

「……やぁ、サイ、並びに可愛い後輩君。今俺は先輩のメンツに賭けて君を、軽く蒸発させた根元な相手をどうにかぶっ殺そうかと思うんだ?ああ、気にしないでくれ、あの便利屋は不評も結構来てるから。これが総意だから」
「落ち着いて下さい、折り合いは何とかつきましたから」

以外にもニッグさんは熱くなっていた。口調は全く変わらないが普段よりも饒舌になっていて、拳は硬く握り締められており今にも誰かに振り下ろされそうな。
これが素の彼なのかはどうかとして、柔らかめに断りながら先程貰ったばかりの爪を見せる。きっちりと六枚手の上に並べて見せていると、二枚取られた。

「……まあ、折り合いは着いてるなら止めておこうか。友達なら二度目は無いからって伝言を宜しく」
「はい、分かりまし……」

視界が反転した。気が付いたら自分はトイレの個室の中に連れ込まれている。目の前にはパーカーを目深に被り、極端な猫背の身長は自分よりやや高め、とは言っても背の低い相手は殆ど居ないが。
彼は来て居ないと思っていたが。「この通り来ているよ」シゼルニーが来ている。そして自分をわざわざ呼び止めたとはつまり何か有るのだろう。「理解が早くて助かるよ…僕は君と会ってから考え、結論を出したよ。あれはやっぱり、君が僕を出し抜いたんだって」
それでもあのクッキーは美味しかった。「だけど。アレは君が僕を騙したんだ。今更褒められたって、何も嬉しくない」心が読めるとなると話が早くて済む。君は一体自分に何を求めているのか。

「…騙された事に着いては、認める。その上で僕のプライドが許せない。何で君なんかにこの僕が騙されたんだ。欲しいのは謝罪じゃなくて、証明だ。僕と君と、何方が優れているか」

取り出されたのは、白黒に塗り分けられた盤と同じく白黒に塗り分けられた駒が数種類。誰がどう見てもチェスの道具一式であり、先攻はシゼルニーがちゃっかり貰っている。

「僕が勝ったら?」
「その時は多分あり得ないけど、非を認める」
「君が勝ったら」
「償いとして半年何かしら五感か指とかを貰うよ、さぁ始めようか」

待った無し。昔に比べてやたら強引になったのを感じるがやるしか無いらしい。

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あきゅろす。
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