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友は盗み聞く、友人は償う
彼は親友であり、何となくであるがこんな時についての行動パターンも十二分に理解している筈である。例えば何か企てている場合なら既に何があるのか怪しい箇所を探っている筈だ。
会場は二層構造になっている。上層には皆が集まっているホールが、中間にはトイレ、下層には有事の際、例えば酒に潰れてしまった相手を寝かせる為他に使うのだろう。
用意された部屋数は見る限りでは大体数十。扉同士の感覚が少し広く、壁の分厚さも防音に備えて厚く造られている様だ。廊下は地図によれば外壁に沿う様に巨大な円形とその内側に十字に突き抜け、綺麗に円を四等分している形状だ。

「…………」

上層に繋がる階段は四つ、廊下により四等分ずつされた扇形を細かく八等分してしまう様にずらして配置されている。ぐるりと外側の廊下を一周しようと歩いてみると、直ぐに件の彼を発見する事が出来た。
あの仕掛けた罠に誰かが引っ掛かる時の様な表情、扉に張り付いた姿の慣れ具合、今現在も扉に聴診器を押し当てて何らかを聞いている姿。間違い無く自分の知る限りトキザ=タクテアであった。自分に気付いたのか口元に立てた人差し指を当てている。
覗きではないらしいが盗聴も立派な犯罪なので、片手に銃を握り締めて近付く。マフラー等を返して貰ってから手足をどれか撃ち抜いて引き渡せば良いだろう。

「…待ってよぉ…まさかこの僕にマフラーとか返して貰ってから手足を撃ち抜いてから引き渡すつもりなんだろうねぇ…」
「理解が早くて助かるよ。さて、撃たれて返すか、撃たれて返して撃たれて撃たれるかどっちが良いかな」
「待って!僕の上司が今素直な感想語ってるからさ…聞き終わるまで待って…」

こんな時に嘘を騙っても仕方無い。友人という事もあり、素直に待つ事にした。どうせ彼は逃げられない。一直線に逃げたならば自分も外さない技術は有る。
暫くの間実に楽しそうに話を聞くトキザを見守る。一挙一動を見逃さない様に。少し体格に不釣り合いな大きさの鞄を肩から提げて居て。何が詰まって居るのか、やらかす為の元ばかりで間違い無いと思う。
やっと立ち上がり、鞄の中に聴診器をしまって、此方と向き合う。何時もと変わらず笑っていて。

「…愚痴は多かったけど、力は認めてるってさ。ハスケイヴと一緒にね…それから、あの後死にかけたんだよね?」
「…偶然に助けられなかったなら、野垂れ死してた。そのぐらいだよ…今は生きてるけど」
「あぁ、ごっめーん!本当にごめんね…その、お返しと言っては何だけどさ…」
「…テメェ等部屋の前で何をしてやがん」

扉が開いて、中から捩れた角が耳の脇から生えた牛人が飛び出して来た。しかしトキザは止まらない。

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あきゅろす。
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