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経営者は嘆く、親族は飛ぶ
便利屋「second-opening」。嘗てラーツが何故か所属していた名前だ。入れ違いで今ではキサラギと名乗っているウサギ君が入っている。事になるのだろうか、とにかく新規加入したのは明らからしい。
それ即ち緊急事態だ。此方の素姓は相手方も知っている、このまま話を続けたとしてメイセさんがメインの話にしようとするのは所長との会話だろう。自分を負かした相手、心にきっと残って居る筈で。
一方で所長の様子は、会話を打ち切りトイレの中にて落ち着いて居る所。もう少しインターバルを置かないとまずい。話を逸らして時間を稼ぐべきだろうか。

「…えーと、『clear-dice』に所属してたんだっけか…あのセグ=ルーワー…正直言ってかなり強かったが…」
「そうだったんですか…僕はちょっとした事故で見られなかったんですけど、どんな風だったんですか?」
「あぁ、その件に関してはラーツが申し訳無い…それはな…」

自分も直接ではなくフーガさんに聞いた話だから、具体的には解らない。ラーツが話してないのはそれなりに楽しめた便利屋の生活を認めたくなかったからだろう。
「銃弾が消えた」「セグは勝った」「彼は立派だった」と認められていたが、実際見てみると如何にも苦労をして来た、今でもしている表情が特に気になる。ウサギ君以外の、主にアライズ等が心労の根源に含まれているのか。

「…という訳で、頭の中にスパイクを埋め込んでたとは思わなくて。恥ずかしい話ながらまんまと裏を掻かれたって訳だ…」
「…そんな無茶してるとは思いませんでした」

それだけの発想の代償として、今現在ロッシュの背後に無理矢理隠れている程の気の小ささ、社交性の低さが出ているのだろうか。此方にロッシュが気付いた、視線で近付かないようにと頑張って言ってみる。
幸い分かってくれたらしく別の相手と話をして居るのが見えた。奇妙な、敢えて例えるならば魚の様な斑模様をした猫人と話そうとして居る。一旦はこれで良しとして、辺りの警戒。と言っても、黒いスーツに黒いサングラスを着けた警備役が居て、会場内にも色々携えた便利屋が居るから殆ど何かしら企てる相手は居ないだろう。

「…あの、お前の背後から何か変な奴が凄い勢いで」
「いやっふぅぅぅっ!」

背後から感じる風圧に楽しそうな声。自分の背後にぶつかるかぶつからないか程度の距離を置いて止まったのであろう動き。振り返ってはいけないと思っていたが両肩を掴まれ、感じるのは柔らかめな肉球の感触。

「…………」
「……やぁやぁ!こんにちは!こうして会うのは二度目まして!」

振り返ってみると、そこには猫の様な毛皮に包まれた腕を備えた人間の姿が。彼の背後には尻尾が小気味良く揺れているのが見えて。
ハスケイヴ=ロウンスナンバー。以前自分が案外色んな物を失った時に対峙した相手で。しかも自分の従兄弟であった。

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あきゅろす。
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