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同業者は集う、責任者は止める
誤解される、されない以前に所長の調子次第で評判はどこまでも良くなるし悪くなるだろう。自分が此処に入って来た時の様な振る舞いを見せられたら何とかなるかもしれないが。
アケミチさんの容体については手を貸さない方が良い。早くしないと腐ってしまい、それはフーガさんにとって許せない事だから。支度をしようとして居ると肩を叩かれる感触が。

「…アケミチって何かお前とあったのか?大体同じ時間帯に帰って来た筈だが…そん時にアレを持ってて、お前の親父?もやって来てて…」
「……話しますけど、なるべく荒事にならない様にして下さい。実は…」

隠しても仕方無いので、ヤクトさんとレザラクさん両名に何があったのかを教えた。友達と一緒に食事に出掛けてほぼ一日中尾け回された、と。具体的な事は彼のメンツもあり隠したが。
話を聞いて何もかも理解した様に数回二人は頷いてから、早足でアケミチさんの部屋に向かって行った。直後に騒がしくなったが、許容範囲内なのであまり気にならない。気にしても特に何も変わりはしないだろうから。
何かしら聞こえている叫び声も、自分が止めようとしても無理なのだろう。匂いが甘ったるいのは仕方無い事だ。




「……まさっ、かっ、二日っ、同時なんてっ、珍しっ、いねっ」
「うん…ねぇ、何でアライズがサイの脛を連続して蹴り付けてるのさ?」
「逆恨み」
「……………」

以外と自分の周りに存在する世間は狭く出来ているらしい。やはり空間魔法を駆使して造られて居る会場内にて、会話を繰り広げたりする中で自分の足元にしっかりと命中して来る靴の感触と衝撃。
大きめなスーツに身を包み頭には不釣り合いなシルクハットを被ったウサギ君と、普通に私服に耳を隠す程度に短く揃えた黒髪に細い体格、無表情に背後に駆動機入りのキャリーバックが詰まったアライズ=タングスタが。彼等も来ているらしい。
逆恨みとは本当に彼女が恨んでいるのは自分の父親であり、自分をどれだけ脛を蹴ろうとも全く彼に届く筈も無いと思うが今更抵抗しても彼女は聞かないだろう。昔の経験から分かっている。
傍目で所長を見てみると、何とか赤の他人の虎人と話をしている様だった。いや違う、変に頷きが多い。話を聞き流そうとして居るだけだ。慌ててロッシュが背後からサポートに向かっている。加減込みでも蹴られた脛が痺れて来た。

「うぉぉい何やってんだアライズ!キサラギも止めろ…すいません本当に…いや止めろ!おい!」

と、そこに大柄な熊人が飛び込んで来る。頭に巻き付けたバンダナにややきつめのスーツを着た姿が似合って居ない。それはともかく、彼には見覚えがあった。
武道大会の個人戦。自分では無く所長が戦って勝った奇妙な、今では理解出来るが何かしらの「消失」を操作出来る相手。確か彼の名前は。

「…メイ、セっ、さん…でした、っけ」
「ん?ああ、そうだがってもう止めろアライズ!何でだ!?」
「逆恨み」

戸惑っていた様だが、意を決してアライズの両肩を掴み自分から離される。蹴りから開放されてやっと、足下に微量の痛みが走った。

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あきゅろす。
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