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所長は尋ねる、人は出会う
少し離れた所で所長が頭を抱えるのが見える。お茶が美味しいと褒められたフーガさん以外の表情はどう見ても困って居る。自分もどうするのか考え思い付いた方法は口を縫い閉じる事だが穏便に済ませたい。

「…いきなり…そんな事言われても…どうしたら…?」

珍しく所長が尋ねた。副所長もといエンフィさんにとっても予想外だったのか驚きの表情を見せている。確かにどうしたら良いのかはとてつもなく迷うだろう。
結果的に天使が攻めて来ると言う証拠は何一つ無くなってしまった、或いは誰かが失くしてしまったのだから。国外からの幾らかの協力者。彼の身分。もしかするともしかするかもしれない。

「…必要なのは…かなり抽象的だとは思いますが第一に気構えです。次に、と言いたいのですが国家間の連携、しかしながら天使が攻め立てて来るから同盟を結びます、なんてそんなにおめでたい国は殆ど有りません」
「……なら、どうしたら…?」
「…国家が信用ならないなら、便利屋間、憲兵との私的な交流が大事かと思われます。此処なら大丈夫そうで良かったです」

やはり嬉しいのか所長が尻尾を揺らした。憲兵である彼との仲は最早言うまでも無い。今の所必要なのは気構えだけなのも正しい。リスクを恐れず総攻撃して来るかもしれない。天使達が。そう言い換えると危機感が無くなるのは気のせいでは無いだろうが。

「…つまり、明日にも、天使達が…世界中を……」
「そんなに震える程の事では有りませんよ。実際、あちら側と此方側の技術力の差は殆ど無いと思われます。要らない物、欲しい物が世界中に煩雑してる状況、そこを全て捨てるなんて、勿体無いじゃないですか」

頷くのが見えたが同情からか納得からかは分からない。アケミチさんが岩塩を持ったまま部屋へと向かって行った。精神的に参ってる状態に痛い話だ、申し訳無く思う。
実際、天使達が攻めて来るとと大前提が無ければ真っ当な範囲に収まる話をしている。とにかく大事なのは気構えだ、今の所。それにもし、本当に攻めて来るとしたならばまず要らない所を、特に治安が悪い所、若しくは戦力削減の為何かしら秀でた所を。少なくとも自分なら。

「…取り敢えずそれだけ話したかった、息子の成長も見る事が出来て嬉しいです。それではこれで…食事、美味しかったですよ」
「……ちょっと、待て。これから、どうする…?」

誰に尋ねたかと言えば、此処の全員だ。父親の処遇は非常に迷う所である。定職には就いて居なさそうだかその辺りは良い。母さんに会ってしまったなら全身をバラバラに引き千切られるかもしれない。

「…やぁぁセグっ!そしてサイ君っ!社会奉仕活動がてら君の母親が是非君の顔を見てみたいって「 」
「あ」
「え」
「あ」

そして、轟音が響かなかった。

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