[携帯モード] [URL送信]
向かった用意に朝と指
自分が先ず朝起きてしなければいけない事は、身なりを整える事だった。鏡の前で髪に付いた癖を直す。次に持っている服の中で、真面目な場所にも通用する物を見繕う。
それでいて二人から指摘される、もとい弄り回されない様に適度な物を。ネクタイ系統の物は着けなくとも大丈夫な所を選んだので恐らく問題は無い。誰かに見立てて欲しいが何せ早朝、フーガさん以外は寝ている。
何時もの様にパンツ一枚で過ごしている相手に服装に関して尋ねるのも極めておかしい気がしたが、それでもやらないよりかはましだと思って見立てて貰った。何時もの様に可愛いよ、と言われて少し思う所もあったが妥協する。

「友達と遊びに行くんだよね?楽しんで行って来てね…」
「はい、満喫出来たら良いかなと思います」

実際は遊びに行くとは異なり、以前やらかした事に対する親友への精算なのだが黙って置いた。他人から見たら異質に見えるかもしれないがこれが自分達の仲なのだから。
空腹だが朝食までまだ時間がある。紛らわせる為に作ってくれたフルーツジュースを一息に飲み干す。今日は親友と久しぶりに出会えてとてもとても楽しい一日になる、かどうかは分からない。
楽しめる時には楽しむ。やらかして巻き込んでしまったならば謝り、埋め合わせに関しては断る。不満は出る前提だとしても最終的にはきっちりと黙らせる手筈だ。あの店が寛容で良かった。
出る直前には持ち物の確認。多目に余裕を持っての金、万が一の時に備えての銃と捕集器に道具箱。前日にメンテナンスをしたばかりで使用にも問題無し。取り上げられようとした際には名刺入れだと押し通したので問題は有りだが無し。

「…行って来ます、皆には内緒にしてて下さいね」
「勿論、私だって水を差すつもりは無いから…」

言葉を受けながら、便利屋を出た。朝は寒い。少し気取った格好にジャケットを羽織る。一人は服装に気を使うがこういった所は彼はどうだっただろうか。既にやらかす予感が伝わる。
気休めでも良いから心の拠り所として、手の甲に指を使い描くのは「安定」「水平」、そして「幸運」。自分で求める物を書いた手をポケットの中に入れて、気が済むまで手を開かない。

「…………」

マフラーが無いから徒歩と公共の乗り物を使わなければならない。それが普通だ。装飾銃が無いから予備の弾薬も幾らか持ち歩かなければならない。それが普通、魔法が使えないから捕集器を持つのは前から。
全能感にも慣れて来た。その上で無視出来る。用意は万全、あとは起こる出来事が十分対応出来るか、それが第一。

【第二十六巻 終】

[*バック]

20/20ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!