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ずれた開閉に仲間と上下
意外な所で機嫌を取り戻してくれた様だが一度決めた事は訂正しない方が良い。時間が来るまで待って、蓋を外してロッシュと交代し馬になって貰い中を進み、
蓋が閉じられて何分かした所でゆっくりと腹這いで後退する。閉じられた蓋は足を使って丁寧に外して落とした。そして何分か振りに外の世界へと戻る。朝日が今にも登りそうだ。
蓋をきっちり閉めてから交代時間の一時間前まで暇を潰す。後は自分の頭が実際に通用するかしないかの問題。蓋は閉じられていたが裏側に糸が括り付けてあり、釘頭に左右の角を引っ掛ける形で固定される今では裏側から閉じるのも可能。
ロッシュがやったみたいに有る程度の脚力かそれとも体格が有るならば高い所にあろうがこの中には入れるのだ。自分の様な人間だとしても踏み台を使えば、踏み台の様な物があれば。

「…………」

辺りには見当たらないので適当な嘘を吐いて誤魔化す事に変更。今どうなって居るかは分からないがロッシュに見られたらきっと怒られる。依頼ぐらいちゃんとして欲しいに決まってる。
棒を使って外した蓋を手に取り、補集器を起動した。半分だけ。自分の足下から六本の昆虫の様な足が伸びる。僅かに光を帯びて居るから手短に済ませたい、蓋を持った手を後ろに伸ばして膝立ちで身体を収める。手探りで糸を手繰り寄せて蓋を閉じる。魔法を解く。
手探りでも蓋に空いている穴のやや上に付けられた糸を釘に引っ掛け、ゆっくりと引けば無事に蓋が出来る。ロッシュが気付かなかったのは自分に開けて貰っていたからで自分もまた同じく。
腹這いで進んで接着剤を擦り付けた辺りを見てみると変化は何も無し。下の方に見える彼女も全く変化が無い。数時間空けただけで誰か他人が入ってるだとかそんな事は無い様だ。構わず残り一時間以内、彼女を観察し続けた。見る限りでは変化無し。

「……これに意味って有るのかな?」
「…長い目で見たら多分必要かなと思えば何とか」

蓋を開けたロッシュはやはり糸には気付かない。蓋と同色なのだから仕方無いし自分にも教える気は無いから恐らく分かりはしないだろう。

「…でもさ、サイには用事が有るんだよね?早く済ませないと駄目だよ…」
「…確かに先延ばしにしたらとても不味い用事が有るから…それなら、僕の頼みを聞いて貰える?」
「……勿論だよ。依頼も大事だけど後輩の方は…依頼も大事だけどもっと大事なんだからね…」

予想外ながら、自分の頼みは無事に聞いて貰える事になった。表情からするに迷っているのが分かって、それでも依頼より自分の方を選択してくれて。有難かった。

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あきゅろす。
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