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休んだ危険に代わりと度合い
現在家族団欒として食事中であり部屋の中を見張る必要は特に見当たらないのだがもしかしたらボロを出すかもしれないから、と一日中見張ってろと言われたので此方も一日中通風口の中に居なければならない。
ロッシュと数時間置きの交代制で。睡眠は近くに借りた部屋で空き時間に。自分はそれなりに徹夜には耐えられると思って居るが、休みを完全に無くすと意図せずに倒れてしまう。
近くに立て掛けて有る棒を使い蓋を閉じて交代時間が来るまでは自由な時間。とは言っても数時間後には自分があの中に入らなければならない。熟睡は出来ない、数分歩いて辿り着いた部屋の鍵を開け、身体を横たえ何も考えない。

「…………」

無心になって目を閉じ、所謂仮眠を取る。次第に蕩けて行く意識をより深くには潜らせない様に。意識を手放すか手放さないかの微妙な境界線の位置を捉えなければならなくて、熟睡は出来ない。
そうして暫くして目を開け身体を起こすと交代時間の数十分前。元に戻せた意識をはっきりさせる様にゆっくりとストレッチを行う。暫くは身体を動かさないからそうしないと強張ってしまう。軽食にトイレと簡単に身繕いを済ませ、暫く時間が経つのを待ってから屋敷に向かった。
蓋を開けるのが交代の合図。自分には小さく聞こえるが響く金属音はロッシュなら簡単に聞き取れるらしい。もぞもぞと靴から飛び出し、続いては身体が降りて来る。数時間振りの顔はやっぱり不機嫌なままで。

「…何か変化はあった?」
「食事が終わって帰ってきたけど、特に何も」
「……分かった」

自分の体格は小さい上運動神経に関しては色々残念である。ロッシュのしゃがむ身体におぶさってから立ち上がり、無理矢理肩を踏み台にしないと通風口の中に潜り込めない。
靴の裏に掌が当てられ半ば無理矢理通風口に押し込まれる。後は薄暗い中を腹這いでなるべく音を立てない様に進み指定された部屋を時間が来るまで覗き続けるだけの事。動かず辺りは閉塞感の詰まる狭い中、言うよりも実際やると神経が磨り減る仕事だ。
親の頼みとは言えどまさか下の彼女も真上から他人に彼氏との情事を覗き込まれるかもしれないとは思わないだろう。自分にしてもこんな依頼を所長が受けるとは思わなかった。
憲兵に見付かったなら一回で注意どころか完全に捕まる行為だ。屋敷の主で有る父親方が容認しても彼女本人が許さないに決まってる。自分も同じ立場なら赦せない上適当な他の罪状も創り上げてみせる。
そこまで便利屋の経営は追い詰められて居たのか、それとも。何にしても自分の様に度々蒸発するのは許される事では無いのは違いない。

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あきゅろす。
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