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練れた依頼に段取り閉所
二人の趣向はそれなりに把握して居て、だからこそ越えなければならない条件は多数存在する。肉類と野菜類何方も充実しているかどうか。特に目障りに見える様な常連の客が居ないか。第一に皆が満足出来るか。
それらを全て達成した上で自分の軽い仕返しが可能かどうか、それに尽きる。確かに自分が撃ち込んだ薬の量は致死量を僅かに越えて居たが顔面を潰されて死に至るかもしれなかった。それとこれとは別。

「…………」
「有難う御座いました…」

受付からの言葉を背後から聞こえながらレストランを後にする。騒がしく無い落ち着いた雰囲気であったし中々上々だろう。皿に盛られた料理が少ないのは少し気になりはするが。
当日の内容が纏まってきた。最低三回と言っていたが三回、つまりは上手くやる事が出来るなら一日の食事を丸ごと奢らせるだけで自分の罰は終わる。最後にあの食事やを持って来たら説得も容易だろう。
フーガさんの心配もこれで終わる。今までに掛かった食事代に交通費はその分最後の最後できっちりと仕返しする事で晴らす。何がなんでも。少し遠出してしまってまた夜更けに帰った。明日は依頼、誠心誠意取り組む事にする。





「……………」

誰もが拒む様な仕事も何一つ愚痴を溢さずにこなしてくれる相手が居るからこそ世界は回って居るのだと借りた本の一文に書き綴ってあった。今現在その事を実感している。やりたくないと思っても今はやらなければならない。
延々と変化の無い景色を見つめるだけの依頼。本日任された依頼はとある屋敷の一人娘の身辺調査。具体的にはお嬢様だとか部類に入る彼女が部屋に男を連れ込んだりして居ないか調べてくれ、と。
どの様にして調べて欲しいのかと言えば、自分達に割り当てられたのは屋敷の人間が不在の内に部屋の中に連れ込んで居るならそこを抑えてくれ、と。調度通気孔が部屋の中に有るから覗いて見てくれ、と。
しかしながら通気孔は思ったよりも小さく、それなりに体格がある皆は潜り込む事が出来なかった。つまりは自分か同じく彼にしか入り込む事が出来ない。交代時間になったのを知るとゆっくり身体を這わせて外に出る。

「……ロッシュ、交代だ」
「……うん…」

垂れ耳の兎人、ロッシュに話掛けるととても不機嫌そうな顔で返事をしてくれた。背の小ささ、体格の小ささで選ばれてしまって、現に彼は自分の背の小ささをかなり気にして居る。
今の心中も十分理解出来た。機嫌が悪そうではなく実際に悪い。背丈の小ささから自分を踏み台にしないと登れなかった。自分も同じく。

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あきゅろす。
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